経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長 年頭所感

2022年1月1日

令和4年 年頭所感

経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課
課 長 渡辺 琢也  

令和4年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

昨年は、新型コロナウイルス感染症との厳しい戦いを余儀なくされた一年でした。ワクチン接種の普及もあり、秋頃から徐々に国内の感染者数は落ち着きを見せていますが、今もなお新たな変異株が発生しており、この戦いはまだまだ続くものと思われます。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による「新しい生活様式」はすっかり我々の日常として定着してきました。毎日出勤すること・対面で会議することが当たり前の生活は一変し、テレワーク・web会議が普及し、人々の働き方も変化してきました。加えて、感染拡大は企業のビジネスモデルそのものを見直す大きな転換点にもなりました。現在、我が国がこのピンチをチャンスに変え、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現できるかどうかの分岐点に立っていると考えています。ソフトウェア協会におかれても昨年7月に「社会のデジタル化の加速」という時代の転換に合わせて協会名称を変更され、まさに業界内でデジタル化を牽引する存在であると考えております。

政府としても、社会のデジタル化を推進するため、昨年9月にデジタル社会形成の司令塔としてデジタル庁を発足しました。また、岸田政権では、政策の大きな柱の一つとして「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、「誰一人取り残さず、すべての方がデジタル化のメリットを享受できる社会」を政府一丸となって目指しています。

その中で、経済産業省では、2018年9月に「DXレポート」を公表して以降、「DX推進ガイドライン」や「DX推進指標」を公開する等、企業のDXの推進に資する施策を展開してまいりました。また、企業のDXに関する自主的取組を促すため、「デジタルガバナンス・コード」をとりまとめ、このデジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業に対してDX認定を行っています。2020年12月に一号案件を認定して以来、昨年12月までに221者を認定してまいりました。更に、昨年DXにチャレンジする事業者を支援するためDX投資促進税制を創設しましたが、DX認定はその要件にもなっており、ますます認定事業者が増えていくことが期待されます。加えて、DXの目標となる企業モデルを広く波及するため、上場企業を対象に優れた取組を行う企業をDX銘柄として2020年より選定しています。昨年は28社を選定し、その中で特に優れた取組を行う企業として日立製作所、SREホールディングスの2社をDXグランプリとして選定しました。今後は、これらの取組の継続に加え、中小企業向けにデジタル化からDXへ向かう道筋を明確化するための手引きも作成する予定です。こうした施策を通じて、企業のDXを加速させるための仕掛けを講じていきたいと思っています。

DXを実現するためには、デジタル技術に対応した人材の発掘・育成も重要となります。ソフトウェア協会に運営事務局を担っていただいてる「U-22プログラミング・コンテスト」では、22歳以下を対象に自作のプログラミング作品を出展していただき、完成度・独創性等を競い合うことで、自らのアイディアで新しい未来を拓く、若きデジタル人材の育成を行っています。また、これまでデジタルスキルを学ぶ機会が無かった人にも、新たな学習を始めるきっかけを得ていただけるよう、経済産業省HPに「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」を開設し、昨年12月時点で102講座を掲載しています。ソフトウェア協会におかれては、掲載コンテンツの事前確認を行っていただいている等ご協力いただいており、開設して約1年経過してもなお、徐々に講座数を充実させていっています。

加えて、AI・IoT、クラウドといったデジタル技術の変化に対応して学びなおしの機会を提供し、高度な専門性を身に付けてキャリアアップを図っていただくことも重要です。専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業大臣が認定する「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」において、昨年12月時点で116講座を認定しており、認定されている講座は厚生労働省の人材開発支援助成金の支給対象になります。会員企業の皆様におかれましても、社内のリカレント教育、スキルアップにご活用いただければと思います。

また、デジタルに関するスキルを持つと同時に課題を自ら発見し、解決していく能力を磨いていくことも重要です。一昨年から開始した課題解決型AI人材育成事業(AI Quest)では、ケーススタディを中心とした実践的な学びの場で、参加者同士が学びあい、AI活用をしていく能力の向上を図っていきます。また、今年はこれらの取組を拡大する形で、地域の企業・産業のDXを加速するため、必要なデジタル人材を育成・確保するためのプラットフォーム(デジタル人材育成プラットフォーム)を構築します。民間事業者等と連携してコンテンツを整備したポータルサイトを立ち上げる他、実践的な課題解決型学習プログラム、全国各地における課題解決型現場研修プログラムの実施を行ってまいります。また、既存のITSS等に加え、デジタル技術を使う人材のためのデジタルスキル・レベルの基準を新たに整備し、デジタル人材のスキルの見える化を図ってまいります。

人口減少などの課題を抱える地方においては、デジタル技術を活用することにより、大都市と変わらない利便性と地域の豊かさを融合した「デジタル田園都市」を構築することがより重要になってきています。経済産業省では、2016年から、地域の産学官が連携し、課題解決や新たなビジネス創出のため、デジタル技術を活用したAI・IoTプロジェクトを創出していく場を「地方版IoT推進ラボ」として選定しています。これまでに全国105地域を選定しており、実証実験やビジネスマッチングなどを通じた地域発のデジタル技術のビジネス化や行政サービスの実装、セミナーでのIoT技術の普及など、各地のラボの取組が様々な成果として結実してきています。また、地方におけるデジタル技術の活用を加速するため、地方とデジタル人材のマッチングについても取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症を契機に、デジタル技術を活用した新たなサービスを提供する企業が次々に現れる中、その多くが大都市圏に集中しているという現状がありますが、その原因の一つとして、デジタル人材が首都圏に偏在していることによって、地方の中小企業がデジタル人材との接点を見つけにくいという点が挙げられます。そこで、昨年は自社課題の解決を目指す地域中小企業と高度デジタル人材とのマッチングを行い、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル案を協働して作成するプログラム(「ふるさとCo-LEADプログラム」)を実施いたしました。また、今年から構築する「デジタル人材育成プラットフォーム」においては、デジタル人材を育成するにあたって、地方における取組とも連携していくこととしています。このような施策を通じて、各地方においてDXの動きが広がるように引き続き後押ししてまいります。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、テレワークが普及しました。昨年は東京オリンピック・パラリンピック期間を「テレワーク・デイズ2021」と位置づけ、広く企業等の皆様にテレワークの一斉実施を呼びかけました。ソフトウェア協会、会員企業の皆様には本国民運動を一緒に推進していただける実施団体として登録いただきました。皆様の御協力のおかげで、大会期間中の人と人との接触機会の削減、交通渋滞の緩和を行うことができました。これを単発的な活動に終わらせることなく、ぜひ日頃からテレワークを推進していただくことで、より一層の定着を目指していきたいと考えています。

最後になりましたが、ソフトウェア協会及び会員の皆様が、我が国のDXを牽引していただくことを期待するとともに、皆さまにとって、新しい年がより良き年となりますよう心から祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

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