「過労死等ゼロ」実現に向けた緊急要請書

2017年2月15日

省庁・団体名

厚生労働省

内容

 厚生労働行政の推進につきまして、日頃よりご理解を賜り感謝申し上げます。
 平成26年11月に「過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)」が施行され、2年が経過しましたが、平成27年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は251件(うち死亡の決定件数は96件)、精神障害による労災支給決定件数は472件(うち未遂を含む自殺の決定件数は93件)となっています。
 また、精神障害による472件のうち、時閤外労働時間数が月80時間以上のものが192件で約4割を、未遂を含む自殺による93件のうち、時間外労働時間数月100時間以上が55件で約6割をそれぞれ占めています。いまだに過労自殺など悲劇が繰り返されており、過労死等ゼロの社会の実現には至っておりません。
 過労死は決してあってはならないことであり、「過労死等防止対策大綱」に掲げられた「過労死等ゼロ」を目指すために、国をはじめとする関係当事者が一丸となって、長時間労働の削減をはじめ、メンタルヘルス対策やパワーハラスメントの予防・解決など、働き方の見直しと職場環境の改善に本気で取り組むことが求められています。
 長時間労働の削減等について、一層の努力をしていただくよう、改めて下記の事項について要請します。今回の要請の趣旨を十二分にご理解いただき、ご協力いただきます様、何卒よろしくお願い申し上げます。

1. 時間外・休日労働をさせる場合には、労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)を締結する必要があり、36協定で定めた延長することができる時間の範囲を超えて働かせてはならないこと。
 36協定に則り時間外・休日労働をさせる場合であっても、時間外・休日労働は必要最少限にとどめられるべきものであり、36協定の内容については、時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)を踏まえ、過重労働を招くことがないよう適正な水準とすること。既に36協定を締結している場合でも、労働実態も踏まえて、その内容を労使で検証した上で、時間外・休日労働の削減に向けた取組や36協定の見直しなどにより適正化を図ること。
 また、過重労働を防止するためには、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)(※)に基づき、使用者には労働時間を適切に管理する責務があり、虚偽の労働時間を賃金台帳に記載した場合等には労働基準法違反となることを十分認識すること。
 併せて、同ガイドラインを踏まえ、

1)参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間として取り扱わなければならないこと
2)やむをえず自己申告により労働時間を把握している場合に、労働者からの自己申告により把握した時間と、入退場記録等のデータにより分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときは実態調査を行うこと

等を徹底すること。

(※)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)については、厚生労働省ホームページを参照のこと。

URL:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

2. 経営層が労働者の健康確保措置に関与する体制の構築を図ることが重要であることから、企業・業界団体のトップ自らがリーダーシップを発揮し、担当役員を選任するなど労働者の心と体の健康確保を組織的に推進するとともに、働きやすくストレスの少ない職場環境を整備するため、ストレスチェックを含めたメンタルヘルス対策の取組を推進すること。 また、パワーハラスメントに該当すると言われる代表的な6つの類型(身体的な攻繋、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)に留意し、トップからのメッセージの発信、実態の把握、研修の実施、相談窓口の設置など、その予防や解決に向けた取組を持続的に行うこと。
 企業にとっても生産性向上等、組織の活性化のためには、働く人々が健康であることが必要不可欠であり、「健康経営」の観点からも上記の取組による「心の健康づくり」を推進すること。

3. 長時間労働の一因として、顧客や発注者からの要請等取引上の都合や商慣行が存在することから、他の企業との取引を行うに当たっては下記の事項に配慮すること。

1)週末発注・週初納入、終業後発注・翌朝納入等の短納期発注を抑制し、納期の適正化を図ること
2)発注内容の頻繁な変更を抑制すること
3)発注の平準化、発注内容の明確化等発注方法の改善を図ること

関連リンク

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

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