「専務のツブヤキ」
~経済産業省の令和6年度概算要求予算及び税制要求など~

2023年9月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 今回は先月末に毎年恒例の経済産業省令和6(R6)年度予算及び税制の概算要求が提出されましたので、当協会の関係部分をツブヤキたいと思います。

 まず、 経済産業省全体ですが、2兆4,615億円 とR5年度予算1兆6,896億円より7,719億円も増加していますが、特に一般会計で中小企業対策費、科学技術振興費、エネルギー対策特会のエネルギー需給勘定、そして今年度から新たにシーリングと別枠で創設されたGX特別対策費が大きく伸びたためです。

 商務情報政策局関係【()内は令和5年度予算】でみますと、GXに絡めて蓄電池や半導体関連のサプライチェーンの強靭化予算が約6千億円と大幅に増えています。また、 デジタル社会の実現・生成 AI への対応でも約1600億円 と令和5年度に比べ1千億円以上伸びています。その一部を紹介すると、

 まず、デジタルライフライン全国総合整備計画も踏まえた アーキテクチャの設計・検証 (スキーム:国⇒IPA、以下同じ)や アーキテクチャの実装に向けた研究開発 (国⇒NEDO⇒民間)を支援する 産業DXのためのデジタルインフラ整備事業 33億円 (24億円)があります。概算要求の金額はそれほどでもありませんが、R6補正で大幅な積み増しが望めるのではないかと期待する次第です。

 次に、データセンター(DC)新規拠点の地方設置の際に必要な 電力・通信インフラの共同溝等 土地造成のための費用 を支援(国⇒民間【1/2補助】)するための データセンターの地方拠点整備事業 15億円 (0.5億円)も計上されています。

 また、実施者を段階的に絞り込み、グローバル市場にも競争力のある基盤モデル開発企業のみが継続支援対象となるような、 生成AIに係る基盤モデル開発 のための支援(国⇒NEDO⇒民間【3年間の継続支援】)を行う 生成AIに係る情報処理基盤産業振興事業 3.7億円 (新規)もあります。

 さらに、中小企業庁予算ですが、お助け隊サービス審査事業、企業規模等に応じて求められる効果的なセキュリティ対策・手法の提示、セキュリティ人材のアウトソーシングに関する効果的な仕組みの整備、 身近に相談等できる関連団体等の形成支援 (国⇒IPA)を行う サプライチェーン・中小企業サイバーセキュリティ対策促進事業 2億円(新規) が計上されていますが、ソフトウェアISACなども支援していただければと期待する次第です。

 税制関係では、イノベーションボックス税制の要求については既に皆さんもご承知かと思いますが、 戦略物資生産基盤税制の創設( 所得税・法人税・法人住民税・事業税)も要求されています。これは、DXや経済安全保障等の観点を踏まえつつ、戦略的に重要な物資の国内生産等に対し、中長期的な予見可能性を示すことのできる規模・期間で、生産活動に応じて、事業投資全体に対する支援を行うため、なんと、 ①戦略物資の生産・販売量に応じた税額控除を措置、②長期にわたる適用期間の措置、③税額控除の繰越制度 を措置するとのことです。どのような物質が戦略物質に指定されるかはこれからの議論のようですが、経済安全保障推進法では令和4年12月、特定重要物資として、抗菌性物質製剤、肥料、永久磁石、工作機械・産業用ロボット、航空機の部品、半導体、蓄電池、 クラウドプログラム 、天然ガス、重要鉱物及び船舶の部品の11物資を政令で指定が指定されており、もしソフトウェアも戦略物質として指定されれば、先のイノベーションボックス税制以上に、IT業界への恩恵は大きいかもしれません。ただ、見方によって 単純に法人税減税ではないかと言われかねない気がしますので、今後の税務当局との交渉は予断を許さない ものと推測されます。

 最後にまた私事ですが、8月20日になんと50射もする暑中射会が新宿支部で開催され、25中し第1部(三段以下)で優勝させていただきました。その1週間後の昇段審査でも無事 弐段に合格 できました。引き続き弓道は順調のようです(^_^;)

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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