「専務のツブヤキ」
~経済安全保障セミナーby 公安調査庁~

2023年6月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 6月1日に東京ビックサイトで行われた電子機器2023トータルソリューション展で開催された公安調査庁が主催する「経済安全保障セミナー」を聴講しました。講演者は同庁の国際調査企画官、原塚勝洋氏でした。

 聞けば、最近は官民連携を重視していて民間の個別事案の相談にも応じるとのこと、 これまでの知見の蓄積をもとに、様々な事案の傾向と対策など助言 してもらえるとのことでした。試しに、同庁のHPの情報提供窓口のところをクリックしていくと確かに「 経済安全保障に関するご相談・講演依頼等窓口 」に行き当たりました。

 これまでの背景など冒頭の説明では、昨年10月の互いに経済安全保障を盾にハイテク製品の輸出規制や外国製品の調達制限、外国企業に頼らないサプライチェーンの構築を掲げた米中対立やウクライナ危機による欧米とロシアとの対立などを通じて経済安全保障が日本でも喫緊の課題としてクローズアップされてきたとのこと。

 具体的には、不正調達、諜報活動、サイバー攻撃など非合法なやり方はもちろんのこと、 普通に合法的に行われている以下のような活動こそ注意が必要 とのことでした。

1. 投資・買収

 実際に中国企業による欧米の 通信などのインフラ企業、半導体関連企業、航空エンジン企業の買収 などがありますが、我が国でも最近航空自衛隊のレーダー基地の近くの土地が中国企業に買収されたとの報道もあり、ちょっと気になりました。

2. 留学生・研究者の送り込み

 中国の軍学系の大の在籍者や出身者が身元を隠して欧米の大学で研究者として従事し不正を働く場合があるようで、 情報収集や研究成果の意図しない軍事利用につながっている ようです。

3. 共同研究・共同事業

 米国は中国でスーパーコンピュータの開発を行う企業の関連企業と米国企業との合弁企業をエンティティリストに掲載するなど、 米国は中国企業を経済安全保障上のリスクとして明確に警戒 しています。

※エンティティリスト(Entity List、EL):米国商務省産業安全保障局(BIS)が発行している貿易上の取引制限リストであり、特定の外国人、事業体または政府(これらを総称してエンティティという)が掲載される。エンティティリストに掲載されたエンティティに、一部の米国産技術など特定の品目を輸出または移転する場合には、BISに許可申請を行わなければならない 。

4. 人材リクルート

  中国や韓国は、高度な専門技能を有する人材を幅広い分野でリクルートの対象 としており、リクルートにあたっては高額な報酬や住宅、役職など魅力的な条件が提示されることもある。また、 懸念国を一方的に利する契約が結ばれる こともある。

などであるとのことでした。

 実は講演のプレゼン資料な中ではA国、B国と決して特定の国の名前は明示しなかったのですが、出席者から事件として公表されている周知の事実もあるのに、なぜ国名を明示しないのかとの意見もありました。私的には尖閣諸島で中国船が領海に居座るなど意地悪されないためかな?という気もしましたが、 同庁の展示会ブースでもらったパンフレットには具体的に中国や韓国の名前が明示 されていました(^_^;) 

 サイバー攻撃では、パンフレットには明確に、 中国、ロシア、北朝鮮が脅威主体 として挙げられています。サイバー攻撃手法と対策では以下の2つが挙げられています。

1. システムの弱点を突いた攻撃、対策

 攻撃の事例としては、 VPN機器の脆弱性を利用した攻撃やクラウドサービスの脆弱性 を挙げています。対策としては、使用している機器の ソフトウェアやアプリを最新版に更新 すること、パスワードを2重にするなど強化することなどを推奨しています。

2. 人間の心のスキを突いた攻撃、対策

 攻撃事例としては、 メールやSNSを利用した標的型攻撃へ警鐘 を鳴らすとともに、対策として、 少しでもおかしいと思ったら先方に確認 するなど慎重に対処することや 住所や電話番号、メールアドレスなどをSNSにむやみに投稿しない ことなどを推奨しています。

 セミナーを聞いて、やはり、未然防止の観点からの対策が中心だと思いましたが、守るよりも攻撃する方がはるかに有利なことを考えると、 事案の発生を前提に発生後の被害を最小限にする観点からの事後対策にも同庁に取り組んでほしい と思った次第です。

 最後に、恥ずかしながら、弓道の方は、私(初段)が代表選手となった又は個人参加した、5月20日(土)の都民大会は新宿区 8位入賞 @45区市町村(20射11中【4射×5名】)及び5月28日(日)の月例射会@新宿支部は第1部【三段以下@26名】 準優勝 (10射5中)と引き続き好調です!!!(^_^;)

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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