「専務のツブヤキ」
~岸田総理所信表明演説、デジタルPF取引透明化法、デジタルインボイス の注目点~

2022年10月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 臨時国会が10月3日に開会され、岸田総理の所信表明演説が行われました。当協会として注目すべき部分は、やはり(成長のための投資と改革)の部分でしょう。①科学技術・イノベーション、②スタートアップ、③GX、④DXの四分野に重点を置いて、官民の投資を加速させるとしています。①は、国家戦略・国家目標の策定を進めてきた、 量子・AIなどの分野 において、官民の投資をこれまで以上に進めていくための方策を早急に具体化しますと言っています。多分、 11月末ごろに補正予算があるでしょうから、そこでソフトウェア関連開発についても期待 したいところです。私的には、 DX関連で数百億円規模 はあるのではと推測しています。

 ②については、 IT技術を活用しながらの地域課題の解決 が挙げられており、当協会も地域デジタル推進委員会で活動していますが、関連施策を上手く活用できればと考える次第です。また、本年をスタートアップ元年とし、 スタートアップ五年十倍増 を視野に、五か年計画の策定に取り組んでいくとのことですが、私的には、ベンチャー企業に対する公共調達における優遇制度の抜本拡充( デジタルマーケットプレイス(DMP)の導入 など)や若く優れたIT分野の才能の発掘・育成( IPAの未踏 )への投資も進めますと言及している点を大いに期待したいところです。④はDXへの投資ですが、「デジタル田園都市国家構想」の推進は当然として、 マイナンバーカードと健康保険証との一体化など全ての国民への普及のための取組を加速 するとともに、 地域でのデジタル技術の社会実装を重点的に支援 していくとのことでした。また、 メタバース、NFT(非代替性トークン※)を活用したWeb3.0サービスの利用拡大 も今後ワクワクしそうなところでした。最後に、ちょっと地味ですが、河野氏がデジタル担当大臣となったので、規制改革において 二年でアナログ的規制を一掃 し、新産業の創出、人手不足の解消、生産性の向上や所得の増大につなげるとの行も今後注視していきたいところです。

※「替えが効かない唯一無二であること」を「ブロックチェーン技術を利用して証明」する技術

 あと、所信表明演説では、経済安全保障にもさらりと触れていますが、経済安全保障推進法ではデジタル化が進展する社会において、国民生活・経済活動を支える基盤として、半導体・ クラウド が挙げられており、今度の補正予算でも、 基盤クラウドの生産技術の開発や次世代基盤クラウドの生産基盤整備に数百億円規模の予算 がつくのではないかと思っているところです。

 次に、2020年5月27日成立し、2021年2月1日に施行された デジタルプラットフォーム取引透明化法 のその後です。実は、当協会も同法律の提案前に意見を求められましたが、規制対象となる 指定基準が国内売上高(広告主の支払総額)1,000億円以上又は国内売上額(広告枠の売手の売上総額)500億円以上 ということでしたので、当協会のほとんどの会員にあまり関係がないため静観していたところ、先日、10月3日に ①グーグル、②フェイスブック、③ヤフーが「特定デジタルプラットフォーム提供者」(規制対象)として指定 されました(ほぼ予想通りでした)。今後、広告主やWebサイト等運営事業者など、デジタル広告分野のプラットフォームを利用する事業者の相談に応じて、解決に向けた支援を行うための相談窓口を設置するとともに、寄せられた声をもとに課題を抽出し、取引環境の改善につなげていくとのことですので、 今後の同法の運用については当協会としても注視 していきたいと思います。

  最後に、働き方改革EXPO@幕張でデジタルインボイスに関する岡本副会長(EIPA代表幹事)と加藤デジタル庁企画調整官が出席したパネルを聴いてきました。岡本副会長からは、ユーザーが最終的に迷惑するので縦割りの弊害をなくし、特に 電子的な保存方法について電子帳簿法とデジタルインボイスとの整合性 は是非取って欲しい旨強調するとともに、EIPAで標準化を進めていたペポルはかかならずしも義務ではない、その意味で特定の業界(自動車、電機など)で使われている既存のEDIはそのまま使えば良い、即ち 既存 EDIとペポルと併用してもらえばいいと 現実的でした。加藤企画調整官も、 デジタルインボイスはむしろ使う人が業務効率化や利益が上がるなどメリットを感じて普及する姿が理想 であり、ユーザーの皆さんも 紙からデジタルに環境が変わる、だから意識も変えないといけない と最後にまとめていました。デジタルインボイスは来年10月に始まりますし、中小企業に対する電子帳簿保存法の猶予期間も来年末には切れます。デジタルインボイス、待った無しという感じでした。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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