「専務のツブヤキ」
~専務が行く(3) 第31回ソフトウェア&アプリ開発展 ~

2022年4月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 4月6~8日にかけて久々に東京ビッグサイトで開催されたリアルの展示会を見てきました。私は主に、「クラウド業務改革EXPO」を見てきたのですが、サイボウズ、OBC、ミロク情報サービスを始め、SmartHR、Chatworks、ビズリーチなどが出展していました。来場者も往年の賑わいを相当取り戻してきており、一安心した次第です。

 そこで私は、「エッジAI」をテーマにしたセミナーに参加しましたが、登壇者はLeapMind㈱ 山崎勝利執行役、日本HP 狭間崇執行役兼経営企画統括本部長、AWS亀田治伸執行役?の3者でした。L社からは、(私にはよく理解できませんでしたが(-_-;)) 量子化技術が今後エッジAIの標準 になるとのことでした。

 次に、それではなぜ今「エッジAI」が注目されるのでしょうか。IoTの時代と言われ、T(もの:センサー)がインターネットを通じてAIで処理されるというのがこれまでの考え方でした。しかしながら、自動運転や金融取引などでは一日に 膨大なデータが発生する時代になり、すべてクラウドに集めてから処理するのは大変ですし、データの発生源とクラウドとの間で物理的な距離があると必然的に遅延も発生 します。例えば、自動運転など即座にデータを解析して判断しアクションにつなげていく場合、そのような遅延は致命的な障害になります。そこで、 データの発生源でできるだけデータを処理して直ぐに判断するエッジAIが主流 になりつつあるとのことでした。

 ただ、狭間氏によれば、今後エッジAIにとって、① コンピュータの計算資源による制約 、② サプライチェーンにおけるセキュリティの確保 、③ 電力の大量消費に対するカーボンニュートラルへの対応 が大きな課題となるだろうとのことでした。また、将来、DXが死語となるようなデジタル時代になった時に企業のIT部門がどうなるかという点では、米国のように 業務部門にITに詳しい人が多く なり、そうなると必然的に 開発もアジャイルが普通となって日々ITが使い易くなり ますが、一方、当初POCで入れたつもりのIT機器がそのまま実用化され、 ッションクリティカルなIT機器が増えて管理が追い付かなくなりedge to cloud(分散型クラウド)に向かう だろうとのことでした。

 亀田氏も、当協会の「Software Everywhere」と同じく「 AI is Everywhere 」だからエッジAIなんだ!とのことでした。特に、従来の機械学習では構造データのみしか読み込めず、予測、データ分類、クラスタリングなどに用途も限定されていたが、 Deep Learning(DL)では画像などの非構造データを使い、読み込ませるデータが多くなればなるほど精度も上がり、AIの可能性は大きく広がった とのこと。このようなことから、 物流業界は今後AIを駆使してロボットが支える ようになるとのこと。具体的には、多数の現場カメラによる 可視化でAIが現場ノウハウを搬送ロボットに蓄積 し、 AIが確率的予測モデルに基づき在庫管理 を行い、そしてAIが 日々のデータからDLで精度を上げていく とますます物流効率が向上していくとのことでした。その時のAIとしては、(AWSでは)50msの通信遅延のため、(塵も積もれば山となるので)クラウドからいちいち指示するのではなく、やはり 現場で判断・処理する自立型エッジAIにならざるを得ない とのことでした。

 今回の「専務が行く」ですが、クラウドの先の世界(edge to cloud?)が少し垣間見えた次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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