「専務のツブヤキ」
~アフターコロナはMMTの出番?バーチャルとリアルが対等、併用が当たり前に~

2020年5月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 テレワークに肯定的だと思っていた自分ですが、流石にこれだけ長く家に閉じ籠る状況となるとストレスに加え、気も滅入ります。それでつい思い出したのですが、以前海外のドキュメンタリーで、 NASAが火星に人類を送り、そこで長期間生活させる実験の模様 を見ました。閉鎖空間(人工のエコシステム)内で人間が自給自足生活にどのくらいの期間耐えられるか?というものでした。研究者達はストレスで様々なトラブルを起こしたようですが、最後は 地中微生物の呼吸で酸素濃度が低下してエコシステムが破綻し実験は呆気なく終了 しました。現在 緊急事態宣言で取り組んでいる巣籠もり生活(ロックダウン)も一種の社会実験 ではないでしょうか?報道によれば、やはりストレスでDVなども増加しているそうです。しかしながら 経済(エコ)システムの破綻でこの実験?を終了とはできません 。NASAは酸素濃度の低下に何ら手を打てませんでしたが、 我々には幸い「(経済)政策」という立派な手があります

 そこでまた思い出したのですが、昨年末頃にこのコラムで取り上げた MMT(Modern Manetary Theory:現代貨幣理論) です。ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授の理論ですが、要は 「自国通貨建て」と「インフレにならない限り」 という二つの条件さえクリアすれば 「いくら借金しても宜しい」 、つまり財政規律は気にしなくてよい という(夢のような) デフレ脱却理論 です。(財政規律を気にしすぎて) 先進国で日本だけがここ20年間GDPが500兆円前後で成長していない というのがMMT推進派の意見です。これに対し、政府は国債の増発でハイパーインフレを招いたらどうするつもりかと懸念するようですが、でも、今はそう言ってはいられません。政府の従来方針とは関係なく、政府は赤字国債を大量に発行し、正にMMTを実践せざるを得ない状況に追い込まれました。でも、今は 売上が蒸発(需要の喪失)しているが供給力は温存 されているのですから、(インフレの心配がなく) 正にMMTの出番 です。私的には、 アフターコロナでは、たとえ意図しないMMTへの政策転換であっても、結果として日本経済がデフレ脱却を図る契機 になれば(不幸中の幸い)と前向きに考えたいです(^_^;)

 そこでアフターコロナ(又はwith コロナ)でニューノーマルがどうなるのかと考えるのですが、 バーチャルとリアルが真に対等に共存する社会 ではないか?という気がしています。象徴は印鑑(又は署名)文化からの転換です。印鑑製造を生業としている方々には本当に厳しい時代が来るかもしれません。かつて、 米屋が皆コンビニになった様に上手く行けば良いのですが 、、、 にそこが当該業界団体の出番 でしょう!また、ワクチンがいつ開発され行渡るか( 意外に早い気がします )次第ですが、 これからはあらゆる場面でリアルとバーチャルの併用が当たり前 となるでしょう。CSAJもそれに向けた準備を進めていくつもりです。これまではセミナーの講師の方々に配信や録画を打診しても、リアルな講演への悪影響を懸念してか、渋る場合が多かったのですが、 今後は(有償が前提でしょうが、)セミナーの配信や録画の許可が取り易くなる でしょう。

 以下蛇足です。先日いつも使っているクリーニング屋のおじさん(70歳?位)の所に行くと、お客が皆テレワークしているせいか、ワイシャツの棚にほとんど何も置いてなく、商売は厳しそうでした。尋ねると持続化給付金のことは知っていましたが、昨年4月はたまたま水害?で売り上げが少なくて(50%以下の要件を満たさず)申請できず、あきらめましたとのこと。「大丈夫ですよ、 年内12月分まで(要件を満たした月に)いつでも申請できますよ 」と教えると、知らなかったらしくちょっと安心されたようでした。でも最大の問題は、その方は PCもインターネット環境もないので申請できない ことでした。 最後は私が自分のPCで代理申請してあげるしかない (民業圧迫のつもりはありませんが、もちろんボランティア)ようです。しかし、このような方々(特に高齢の自営業者)もっといる気がして、 これってビジネスになるかも 、と思った次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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