「専務のツブヤキ」
~最近の政府のデジタル政策の動きについて~

2019年10月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 この度、報道によれば台風19号は日本各地に甚大な被害を及ぼしたとのこと、被害にあわれた地域及び会員企業の皆様に改めてお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興を祈念しております。

 さて、今回は10月3,4日に 未来投資会議 及び デジタル市場競争会議 が政府内で開催されて、デジタル政策について、あまり記事になっていないようですが重要な方向性が示されていますのでちょっと今回はツブヤキたいと思います。

 まず、3日に開催された未来投資会議ですが、デジタル技術の社会実装を踏まえて規制を精緻化しようといることが議題になりました。特に、 モビリティ、フィンテック/金融、建築の3分野 について、 実証事業を実施し、将来の規制等のあり方に係る問題点や課題をを洗い出す とのこと。

 モビリティ分野では、 AI等を活用した工場等の常時監視を行うことにより完成検査の合理化 や無人自動運転車における運行時に取得するデータの活用により、型式認証審査の合理化の可能性を検討するとのことでした。フィンテック/金融分野では、 顧客の取引履歴データ等の分析・活用 により、プロの投資家として扱うことが可能な個人を特定できないか(私的にはむしろ インサイダー取引の取締りに活用する方が有益か という気がしますが・・・)、高齢者顧客対応の判断ができないかを検討するようです。最後の建築分野は、人手不足対応でしょうが、センサー精度の向上、AIによるビッグデータ分析、ドローン活用などが進む中、 建築物の外壁やエレベーターの定期調査・検査に応用 できないか検討するとのことでした。

 次に、デジタル市場競争会議ですが、これは9月27日に菅官房長官をヘッドに関係閣僚で構成される「デジタル市場競争本部」が政府内に設置され、その下に位置付けられた有識者を含む組織です。4日に開催された会議では、以下の5つのことが議題になりましたが、審議内容は非公開なので、公開されている資料のみから推測するしかありませんが、凡そ以下の通りでした。

1. データの価値評価も含めた独占禁止法のルール整備

 デジタル市場では、市場シェアの小さい企業の買収でも、データの集中やデータの価値故に競争制限が起こる可能性があるので独占禁止法の 企業結合(合併)ガイドラインの見直し を行うとのこと

2. デジタル・プラットフォーマー取引透明化法の検討

  大規模なオンラインモール、アプリマーケット等を対象 に個別事業者に対する取引条件の開示や運用状況の定期的な報告・公表とモニタリング・レビューの実施を行い、必要に応じ勧告、改善命令を出せるように、次期通常国会に法案を提出する予定とのこと


3. デジタル・プラットフォーム企業による消費者に対する優越的な地位の乱用への対応

 公正取引委員会において、 年内をめどに上記に関するガイドラインを策定 する予定とのこと

4. 個人情報保護法の見直し

  事業者に対する個人情報の消去・利用停止請求 、より柔軟な個人データの利活用、 外国人事業者に対する法執行の域外適用を認める 方向で個人情報保護法の改正案を次期通常国会に提出する予定とのこと


5. デジタル市場の競争評価

 デジタル・プラットフォーマー取引透明化法の対象として、今後競争評価を行う市場の選定に当たって、 デジタル広告市場【関連する検索やSNS】も評価対象とするかどうか 検討するとのこと

 このように、来年度以降、 デジタル・プラットフォーマー取引透明化法や個人情報保護法の改正案が次期通常国会で成立 すれば、デジタル市場もかなり様変わりするかもしれません。CSAJとしてもよくウォッチしていきたいと思っております。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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