「愛と繁栄を実現する経営改革」ブルーオーシャン戦略の実践~戦わずして勝つ具体的手順~

2018年10月1日

CSAJ 監事 戦略経営コンサルタント 公認会計士 山田隆明

 ブルーオーシャン戦略の創始者が、同戦略の実践手順を示した書物を出版した。
私のコンサルティング活動にも参考になる点があるので、今回は同戦略を紹介する。
 はじめに、ブルーオーシャン戦略とは、サメがうごめく血で染まった海(レッドオーシャン)のような競争の激しい市場を避け、真っ青な海(ブルーオーシャン)のように競争のない市場で勝負する戦略をいう。まさに「戦わずして勝つ」を実践するものといえよう。
創始者のW.チャン・キムとレネ・モボルニュが約20年の研究を踏まえて、2005年に発表した「ブルーオーシャン戦略」が大ベストセラーになり脚光を浴びた。そして昨年(日本語訳は今年)、彼らがレッドからブルーへの具体的な移行手順を示した「ブルーオーシャン・シフト」を発表したことで、より身近なものとなった。

 ブルーオーシャン戦略の特徴を一言でいえば、
(1)市場の垣根を見直して新市場を開拓し、
(2)4つのアクション(取り除く、減らす、増やす、付け加える)により、これまで相矛盾すると考えられていた「差別化」と「低コスト」を同時に実現させることにある。
例えば、ヘアカット専門店のQBハウスは、
(1)肩もみ、シャンプー、マッサージ、髭剃りなど、これまで当たり前とされてきた感性志向のサービスをやめ、徹底した機能志向へと転換することで、新たな市場を開拓し、
(2)散髪につきものだったシャンプーやマッサージを”取り除き”、10分で1080円という時短と安さと便利な立地を”付け加え“たことで、「差別化」と「低コスト」の両方の実現に成功した。

 レッドオーシャンからブルーオーシャンへの移行は5つの手順から成る。
Step1.<準備>
 (1)今のままでは長続きしないことに気付かせることで、“なんとかせねば“との危機感を強く抱かせる。
 (2)社長中心の改革プロジェクトチームを結成する。
Step2.<現状を知る> 
 自社とライバル会社の競争の状況を把握することで、“戦わずして勝つ方法“を見つける決意を固めさせる。
Step3.<社内で顧客の声を推測して、目的地を思い描く>  (1)顧客の要求を探り、
 (2)開拓可能な需要全体を把握する。
Step4.<顧客に実際に聞いて、目的地への戦略案を練る> 
 (1)市場の境界を引き直す。
 (2)差別化と低コストを同時に実現する4つのアクション(取り除く、減らす、増やす、付け加える)を考える。
Step5.<戦略を絞込み、実行に移す> 
 (1)テストしてツメを固め、
 (2)戦略を完成させ市場に投入する。
また、各Stepには対応する「分析ツール」が整備されており、(著者によると)だれでも実践できるものになっている。

 この5つのStepからいえるのは、「顧客の要求を聞いて、応えて、満足いただく」点が中心を成していることだ。これは戦略づくりの基本だ。これがそもそも「会社の目的」だからだ。
そして、それに対して自社の持つ強みをどう活かせるかを(ライバルも見据えながら)検討する。
こうしてできたものが経営戦略だ。
いくら新しい理論や方法論が生まれてきても、この基本はけっして変わることはない。

 実際に本ツールを使ってコンサルティングを実施して分かったことは、これは「顧客の要求を聞き出すのに有用なツール」だということだ。
いきなり顧客に「あなたは何を要求していますか」と尋ねても、答えに窮するだろう。あらかじめ”アタリをつけておいて”から質問すれば相手も答え易くなる。そのためのツールだと。
 一方でブルーオーシャン戦略に対しては、ブルーオーシャンが必ず存在する保証がないとか、ブルーオーシャン開拓に成功しても他社に真似されたら終わりだなどといった批判がある。
 しかし、顧客の要求を正しく把握することは、ブルーオーシャン戦略に限らず、会社の今後を考えるうえで必須の作業であり、会社のあらゆる活動を行ううえで必ず役立つ作業である。
やっておいてムダになることは絶対にない。

(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
わくわく経営株式会社 代表取締役
戦略経営コンサルタント 公認会計士

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。
株式会社インテックで10年間基幹システムのマーケティングおよび営業。
その後公認会計士を経て、
現在:戦略経営コンサルタント、わくわく経営株式会社 代表取締役。
“社長がワクワクしながら、意気込みをもって、本気で経営に取り組める”お手伝い。
コンサルティング内容:

  • 「ブルーオーシャン戦略」立案支援
  • 「経営計画」立案支援
  • 「経営管理PDCA」実践支援

2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

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