ソフトウェア協会(SAJ)として政策要望をとりまとめました

2021年9月9日

当協会では以下の通り要望をとりまとめ、2021年8月24日に、日本IT団体連盟へ政策要望を提出しました。

要望項目一覧

1.「こども庁」の設置
2.マイナポータルの推進と業務の集約
3.国税提出情報の利活用
4.銀行法の改正
5.所得税法、法人税法、消費税法、電子帳簿保存法および関係法令の改正
6.デジタル化及びクラウド化の一層の加速
(1)高校版GIGAスクール対応における環境整備への予算確保
(2)デジタル化による年末調整の新しいあり方に関する納税環境整備について
(3)日本における電子インボイスの普及を通じた業務デジタル化に向けた提言
(4)FAXの削減
(5)古いIoT機器類(ルータ等)の削減
(6)組織間で用いるEメールの削減
(7)セキュリティ対策の最低限のレベルの底上げと協調
(8)従来(オンプレミス)型のシステム構築からの転換
(9)有事における緊急オペレーションのクラウド活用と情報共有

要望概要

1.「こども庁」の設置

メディア等には一時「こども庁」創設に向けた記事が散在されたが、新型コロナの感染状況が深刻な中、東京五輪などの時期を迎え、いったん、その話題が途絶えつつある。しかしながら、このような現状であれば余計に、今後の子どもの医療・保健・療育・福祉・教育を総合的、一元的に所管する「こども庁」の創設に向け、われわれ業界団体でも支援すべきと考える。

2.マイナポータルの推進と業務の集約

  • マイナポータルの提供サービスを拡大していくと思うが、社会保険届出に関していえば、e-Govからスタートし、マイナポータルが後発。健康保険組合への届出はマイナポータルだけ対応。e-Govを廃止し、マイナポータルに集約してほしい。
  • 年末調整における保険料控除申告に使用する証明書について、マイナポータル連携している保険会社が少なすぎるし、保険会社も積極的に取り組んでいるとは感じない。国からも、率先して保険会社等への対応推進を進めていただきたい。

3.国税提出情報の利活用

内閣官房IT総合戦略室にて検討されている、「ベースレジストリ戦略」における「企業の決算情報のDB化」について、非上場企業の決算情報を集約し、経営指導や、融資相談等に活用することを目的として、新たに決算情報DBを構築し、民間企業からこのDBに決算情報をアップロードして公開するとした検討がおこなわれている。
 参照資料1:「ベース・レジストリの指定について」P7参照
 https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/SpecifyingBaseRegistry.pdf
企業決算については、法人税の電子申告(e-Tax)をしているなら、財務諸表や法人事業概況書や勘定科目内訳書は添付されデジタルデータとして提出されている。改めて、データ集約のためのインフラやその仕組を構築するよりも、現状国税に提出済みのデータの利活用を検討いただくほうが、効率的である。国税への提出情報の再利用が、規制上許可されないなどの課題があると想定するが、その点の改革検討を進めていただきたい。

4.銀行法の改正

以下の諸課題の解決を要望する。
課題1:銀行入出金明細データをどれだけ加工をしても、現行法上、管理が必要なデータのままとなる
→データの質の変化など、一定の基準に基づいて、加工情報を銀行法その他関係法令上の管理対象外とすることを明記いただきたい。
課題2:情報の利活用が制限されている
→お客様の情報はお客様のものであることを明文化し、お客様が自ら望むように情報を利活用できるようにしていただきたい。
課題3:銀行に強い監督権限を認めている
→一定の条件のもと、データが銀行の監督下から外れるようにしていくとともに、できるだけ銀行による監督ではなく、中立的な自主機関である「電子決済等代行事業者協会」による監督によるものとしていただきたい。

今後、データ利活用の気運がさらに高まることが予想される中、銀行法の各規定についても、銀行法の基本理念である「預金者保護」と新たなニーズである「データ利活用」の両側面を考慮したものにリフォームしていただきたい。

5.所得税法、法人税法、消費税法、電子帳簿保存法および関係法令の改正

以下の観点から、所得税、法人税、電子帳簿保存法および消費税法等で個別に定められている「帳簿・書類の保存」に関する要件を、再整理してほしい。
 (1)ユーザーの利便性の観点
 (2)社会的システム・デジタル化の観点
 (3)データ利活用の観点
 (4)デジタルガバメント(行政側の業務改革(BPR))の観点
これにより、社会的システムのデジタル化を見据えた形での新しい 「電子帳簿保存法」を制度化してほしい。

6.デジタル化及びクラウド化の一層の加速

(1)高校版GIGAスクール対応における環境整備への予算確保

小学校、中学校では、GIGAスクール対応において、国策としてPC、通信環境など整備してきたが、高校では今後さらにプログラミング教育に対応した環境(高スペックなPC、更なる通信環境など)が必要であるが、「情報Ⅰ」の教育、大学入試に必修科目となるための準備としては、個別の家庭に依存する形となっている。一律の環境を国が整備することは、デジタル人材の不足を補い、国力の底上げにつながる要素の一つと言える。ぜひ、高校版GIGAスクール対応における環境整備を地方自治体に任せるのではなく、デジタル庁に予算を確保すべきと考える。

(2)デジタル化による年末調整の新しいあり方に関する納税環境整備について

以下の諸課題の解決を要望する。
課題1:デジタル化による年末調整業務のBPRの必要性を、令和4年度税制改正に明記すること
課題2:給与支払毎のデジタルでの報告に関する制度設計を開始すること
課題3:控除証明情報のデジタル収集の環境整備
課題4:年明けでの年税額計算業務の実施

(3)日本における電子インボイスの普及を通じた業務デジタル化に向けた提言

2023年10月のインボイス制度導入を見据え、バックオフィス業務の効率化を図る観点から、請求に係るデータ(「電子インボイス」)の円滑なデータ連携が可能となるよう、その標準仕様の策定が不可欠である。
電子インボイス推進協議会(EIPA)では、「電子インボイス」の日本標準仕様について、中小・小規模事業者から大企業に至るまで幅広い事業者が、容易に、かつ、低コストで利用できるものとすることが不可欠であり、同時に、グローバルな取引にも対応できるものとすることも重要であるとの認識に立ち、「Peppol(ペポル)」をベースとして採用することを決定した。
SAJと関わりの深い電子インボイス推進協議会(EIPA)では、以下の状態を実現すべく、会員各社協力の上、「日本標準仕様」の策定を行うとともに、「日本標準仕様」の普及促進を進めていく所存である。
この電子インボイスの日本標準仕様の策定・普及促進活動に関し、政府が以下の役割を果たすように要望する。
【具体的な提言内容】
・「日本標準仕様」の策定に向け、「Peppol」の運営管理組織(OpenPeppol)との交渉等につき、政府が積極的な役割を担うこと。
・「Peppol」の枠組みの中で、政府が「日本標準仕様」に係る適切な管理・運用体制を構築すること。
・「Peppol」をベースとした日本標準仕様の「電子インボイス」の利用普及について、周知広報のみならず、とりわけ中小・小規模事業者が利用しやすくなるようインセンティブ等を設けること。

(4)FAXの削減

いまだにFAXを用いた業務が行われているが、非効率かつ生産性の低い業務の象徴ともいえる。さらにFAXは入退出ができる人であれば、誰でも閲覧ができるとともに、FAX紙が紛失したとしても追跡は極めて難しい。
FAXの利用は、業務の非効率を招き、セキュリティ上のリスクも高く、早急に削減し、より電子的な対応が行える環境整備を強く求める。

(5)古いIoT機器類(ルータ等)の削減

メーカーサポートが切れたIoT機器(ハードウェア・ソフトウェア)を政府が積極的に廃棄するように働きかけ、国内のより安全なIoT化を推進頂きたい。

(6)組織間で用いるEメールの削減

我が国の組織間における情報交換の主体はEメールであるが、昨今コミュニケーションツールの開発や普及が進んでいる。またファイル交換などにおいてもクラウドストレージなどのサービスも多数存在している。
情報交換の手段として用いてきたEメールは、サイバー攻撃の元凶と言っても過言ではなく、コミュニケーションツールやクラウドストレージなど、クラウドサービスを活用した新たなデジタル環境に早急にシフトすべきである。
なお、Eメールを使用する場合は、最低限セキュアなメール環境に移行すべきであり、DMARC(DKIMやSPF)を利用し、なりすまし防止対策を必須にする必要がある。

(7)セキュリティ対策の最低限のレベルの底上げと協調

我が国では兼ねてよりサプライチェーンリスクの問題が叫ばれているが、根本的な解決にはいまだ至っていない。そこで、日本においてもより具体的、かつ、技術的ながら、簡易的に実施できるセキュリティ対策を促し、我が国のセキュリティレベルをあげる必要がある。デジタル庁や内閣サイバーセキュリティセンターが中心となり、そのようなセキュリティ協調領域の対策を示していくべきである。

(8)従来(オンプレミス)型のシステム構築からの転換

経済産業省で検討が進む「クオリティ・クラウド」の検討や構築を加速させるとともに、従来型のシステムはできる限り排除し、セキュリティ上の懸念がある場合においてもプライベートクラウドを検討する社会を醸成すべきである。

(9)有事における緊急オペレーションのクラウド活用と情報共有

今後、国内において各種災害や感染症などが発生した際に、より効率的に、かつ、より国民の安全が担保されるよう、直近の災害や感染症などを例に、政府機関、地方自治体、医療機関や保健所等のオペレーションについて、クラウドを活用して情報共有を行うとともに、各種事務作業の抜本的改善や見直しを行うべきである。

お問い合わせ

一般社団法人ソフトウェア協会(CSAJ)
事務局 戸島 お問い合わせフォーム

PAGE TOP