静岡県袋井市・磐田市圃場視察 終了報告

2019年1月8日

農業ICT研究会主催

 平成30年11月21日(水)、静岡県袋井市及び磐田市の圃場を視察致しました。

当日スケジュール

10:00 JR掛川駅南口集合・出発
10:40~11:20 近藤農園視察
11:30~12:10 大野農場視察
12:20~13:00 どんどこあさば着・昼食
13:40~14:30 静岡県農林技術研究所視察
15:00~16:30 スマートアグリカルチャー磐田視察
17:40 JR掛川駅着・解散

■近藤農園

 当日は、中村 憲司 農業ICT研究会主査をはじめ、農業ICTコアメンバー及びCSAJ会員企業、袋井市の方にご参加頂きました。(7社11名)
 はじめに、株式会社大和コンピューター様が技術提携をしている近藤農園を視察しました。
 2018年9月下旬に発生した台風24号により、袋井市では3日間に及ぶ停電が発生した際に甚大な被害がありましたが、視察時はようやく結実期を迎えていました。
 近藤農園では当初、伝統的なマスクメロン栽培(隔離ベット)を行っていましたが、高齢化のため省力栽培が必要となり、8年ほど前から養液栽培を開始。土での生育からロックウール(岩綿。玄武岩、鉄炉スラグなどに石灰などを混合し、高温で溶解し生成される人造鉱物繊維)に変更したことにより、土から感染する病気を防ぎ、また、植え替え時の土の殺菌が不要になるなど労力面・金銭面共にコストの削減に成功したとのことです。
 成長過程によって棟が分けられており、受粉や摘果など作業を除き、養液の灌水などはICTで管理を行っています。

1株1果で栽培
Dトレイ(栽培ベンチ)はオランダ発祥の根域制限栽培用ベンチ。中には根がびっしりと張っています。
農園を管理されている近藤様

大野農場(Big Roots)

 次に、株式会社大和コンピューター様が農業事業への取組の一環として農作物を生産、管理する大野農場を視察しました。
 大野農場では、近藤農園と同様、Dトレイによる根域制限栽培を行っています。巨大なハウスの中でマスクメロンが栽培されており、列ごとに植え替えや収穫の時期が細かく明記され、管理されています。養液の供給や空調、湿度なども全てICTで管理されており(統合環境制御システム)、栽培に適した環境が整えられており、これまで手作業や人による巡回、観察などで管理されていた部分が露地栽培と比較して少なくなっていることが伺えました。
 また、大野農場でも数日間の停電による甚大な被害がありましたが、ハウスの中で、一際大きく育っている株では、直径20センチほどのマスクメロンの果皮には特徴でもある網目状模様が形成され、間もなく成熟期を迎えるようでした。
 大和コンピューター様では、他にもICTを活用した農業への取り組みとして、NFCタグを活用した「農場管理システム」や流通トレーサビリティーシステムの構築を行っています。

育苗の様子
植え替え予定の株
植え替え時期、収穫時期などが列ごとに管理されています。
人の背の高さほどに成長
養液や空調などの管理する中枢部分
ネットが張り出したマスクメロン

静岡県農林技術研究所

 どんどこあさばでの昼食後、大和コンピューター様の新人研修の皆様と合流し、静岡県農林技術研究所にて、野菜生産技術科 今原様より植物・環境情報の統合によるスマート環境制御技術の開発と活用についてご講演頂きました。
 まず、静岡県の農産物の分布や特徴、静岡県農林技術研究所で誕生した農産物について、ご解説頂きました。静岡県農林技術研究所では、多収高品質な作物を生産するため、また、これまで勘や経験値に頼っていた環境や条件などを数値化し、スマート農業を促進することを目的とし、様々な開発、研究が行っています。その中で「植物の葉面積の非破壊評価法」や、非破壊評価法に基づく「給液制御システム」などが研究所において開発されたことについても解説がありました。
 また、開発者向けの今後のスマート農業のポイントなどについてもご教示頂きました。

静岡県農林技術研究所 今原様
会場の様子

スマートアグリカルチャー磐田(富士通)

 最後に静岡県磐田市にあるスマートアグリカルチャー磐田を視察しました。
 スマートアグリカルチャー磐田では、①マーケットイン型の生産・加工、②種苗ライセンス事業、③施設園芸向けインフラアウトソーシングの3つを柱に事業を展開しています。また、農業における労務管理や生体情報の自動化などにも着手しており、スマート農業を実現化するための様々な側面での自動化・ICT化についてご解説頂きました。
 講演後は農場を視察しました。オランダ式のフェンロー型温室(温室の骨材が細いため採光性がよく、換気効率を高めるため軒高が高い)が採用されている棟では、赤、黄色、オレンジの3色のパプリカが栽培されており、環境、育成状況、選別、出荷など多くの面で自動化が図られていました。別の棟では約0.7haという広大な敷地にあるハウス内で、水耕栽培により葉物が生産されていました。根元には常時養液が流れ、ハウスの各所に設置されたセンサーによって光量や気温が管理されていました。

管理棟
講演の様子
スマートアグリカルチャー磐田の事業などについてご講演頂いた野口様
フェンロー型温室で栽培されているパプリカ
播種日や定植日など棚ごとに記載され、管理されています。
葉物の下には養液が常時流れています。
集合写真

最後に

 農家の圃場から企業として農業に取り組んでいる施設まで幅広く現状を目の当たりにし、高齢化や自然環境の変化など多くの課題を抱える日本の農業において、様々な面でのICTの利活用の可能性が大いに感じられる視察でした。

 視察に際し、大和コンピューター様をはじめ、近藤様、静岡県農林技術研究所様、アグリカルチャー磐田様には多大なるご協力を賜りましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

お問い合わせ

一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)
事務局 澤口、鈴木 お問い合わせフォーム
TEL:03-3560-8440

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