経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長 年頭所感

2021年1月1日

令和3年 年頭所感

経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課
課 長 田辺 雄史  

 令和3年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 昨年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、私たちの暮らしや、企業の働き方が激変した一年でした。「新しい日常」に向けて、我が国全体のデジタル化への対応は待ったなしの状態となっています。

 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた急激な変化に対応しつつ、我が国が持続的に発展していくためには、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する、人間中心の新たな社会「Society5.0」を、いち早く実現しなければなりません。急速に進展してきたスマートフォン、SNS、AIなどの「デジタル技術・サービス」、デジタル技術を駆動させる戦略資源としての「データ」が、あらゆるものと「つながる」ことで、新たな価値や産業が社会にもたらされると考えられています。

 新型コロナウイルス感染症の影響によって、多くの企業がテレワークやデジタル技術を使った新サービスの提供などの対応を余儀なくされましたが、これは新型コロナウイルス感染症という一過性の出来事として捉えるのではなく、従来からの事業環境の継続的な変化が非常に短い時間で起きたこととして捉えるべきです。このような事業環境にも柔軟に対応し、我が国が持続的成長を実現するには、社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が必要不可欠です。昨年7月に策定された骨太方針2020においても、社会全体のDXの実装の加速化、サプライチェーンのデジタル化やAI、ロボットの導入、5Gの推進などが盛り込まれています。これらは「デジタル強靭化社会」の実現に向けた基本的枠組みとして、新型コロナウイルスの感染症の拡大を阻止するためにも喫緊に取り組むべき事項となっております。

 経済産業省では、昨年5月に施行した改正情促法において、これまでは別々だと考えられていた「経営・事業」と「ITシステム」を一体的に捉えています。企業の成長を実現する要素としてのDXを進めるには、既存の業務プロセスをデジタルで置き換えて業務効率を高める(デジタライゼーション)だけではなく、顧客との関係を構造的に変化させ、新たな価値を生み出していくような取組が必要です。弊省が平成30年9月に発表した「DXレポート」において警鐘を鳴らした「2025年の崖」の克服のためにも、こうした新たな企業価値が生み出されていくことが重要です。

 また、「DXレポート」の公表以降、企業が自社のDXについて自己診断を行うための「DX推進指標」など、様々なツールを整備してきました。昨年はこれに加え、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を「デジタルガバナンス・コード」としてとりまとめました。デジタルガバナンス・コードは、改正情促法に基づく認定(DX認定)の認定基準、および、DX銘柄(平成27年から過去5回実施してきた「攻めのIT経営銘柄」を、令和2年からはDXに焦点を当てる形で「DX銘柄」に改めました)の評価基準と連動しています。こうした制度等を通じ、企業のDXを促進するための環境整備を進めてまいります。

 DXを実現するためには、デジタル技術に対応した人材の発掘・育成も重要となります。コンピュータソフトウェア協会に運営事務局を設置していただいている、「U-22プログラミング・コンテスト」等を通じて、自らのアイディアで新しい未来を拓く、ITエンジニアの育成に引き続き注力します。

 また、AI・IoT、クラウドといったデジタル技術の変化に対応して学びなおしの機会を提供し、高度な専門性を身に付けてキャリアアップを図っていただくことも重要です。専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業大臣が認定する「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」において、令和2年12月時点で107講座を認定しておりますが、多様な講座に加え全国で受講の機会を確保するため、昨年1月より、全ての授業をeラーニングで行う講座も認定できるよう対象を拡大しました。会員企業の皆様におかれましても、社内のリカレント教育、スキルアップにご活用いただければと思います。

 デジタルに関するスキルを持つと同時に課題を自ら発見し、解決していく能力を磨いていくことも重要です。昨年から開始された課題解決型AI人材育成事業(AIQuest)では、ケーススタディを中心とした実践的な学びの場で、参加者同士が学びあい、AI活用をしていく能力の向上を図っていきます。

 これまでデジタルスキルを学ぶ機会が無かった人にも、新たな学習を始めるきっかけを得ていただけるよう、コンピュータソフトウェア協会にもご協力いただき、「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」を開設しました。

 人口減少などの課題を抱える地方においては、デジタル技術活用の重要性はより一層高まっていると考えています。経済産業省では、平成28年から、地域の産学官が連携し、課題解決や新たなビジネス創出のため、デジタル技術を活用したAI・IoTプロジェクトを創出していく場を「地方版IoT推進ラボ」として選定しています。これまでに全国102地域を選定しており、実証実験やビジネスマッチングなどを通じた地域発のデジタル技術のビジネス化や行政サービスの実装、セミナーでのIoT技術の普及、または子どもたちへのプログラミング教育など、各地のラボの取組が様々な成果として結実してきています。また、情報処理推進機構(IPA)で実施している「未踏事業」の卒業生をはじめとする、高度なITスキルを有する人材と地域が連携・協働し、地域課題解決にとり組むことができる仕組みづくりを進めることで、地方におけるDXを一層推し進めていきます。

 また、すべての小中学校において、PCを1人1台提供する取組も進んでおり、地域におけるIT活用の基盤が整っていくと考えます。これまで以上に、地域間のコミュニケーションの機会を増やし、経産省・他省庁の施策も活用いただき、各地方においてDXの動きが広がるように後押ししていきます。

 デジタル技術の進歩・普及は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための取組としても急速に発展が進んでおり、企業のビジネスモデルや国民生活にも、様々な変化をもたらしています。また、「新しい生活様式」や「多様な働き方」の実現にも大きく関わっています。インターネットにつながる環境で、デバイスさえあれば、非対面・非接触かつ、場所や時間に縛られず、多様で柔軟な働き方ができるようになってきました。新型コロナウイルス感染症対策のためにも、より多くの企業等の皆様に積極的なテレワークの実施を検討いただきたいと考えています。

 テレワークに関しては、平成29年から、大会の開会予定日である7月24日を含む週を「テレワーク・デイズ」とし、広く企業等の皆様にテレワークの実施を呼びかけさせていただき、コンピュータソフトウェア協会会員の皆様におかれましても、毎年、ご参加いただいています。昨年は、苦渋の決断により、テレワーク・デイズという期間を設けての実施は中止となりましたが、今年開催される東京オリンピック本番に向けて、更なるテレワークの実施を通じた交通渋滞の緩和にご協力いただきますよう、改めてよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが、コンピュータソフトウェア協会及び会員の皆様が、我が国のDXを牽引していただくことを期待するとともに、皆さまにとって、新しい年がより良き年となりますよう心から祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

PAGE TOP