ニューヨークだより 2018年7月
「米国におけるテック人材に関する動向」

省庁・団体名

JETRO/IPA NewYork

内容

 米国のテック人材(ソフトウェアエンジニア、デザイナー、製品管理者、データ分析担当者等)の平均年収(2017年)は10万ドルを超えており(最も高い都市はサンフランシスコの14.2万ドル、続いてシアトルの13.2万ドル)、日本(600万円程度)、英国(7.8万ドル)、フランス(5.6万ドル)の給与水準と比較して高い水準にある。求められる学位は、米著名テクノロジー企業においては、学士号や修士号取得者が多くを占めるが、テック人材不足に伴い、実践的な職務経験やスキルがより重視される傾向にあるテクノロジー業界では、大学の学位が採用の必須条件ではなくなっている。
 大手テクノロジー企業は近年、大学と積極的に連携し、実践力を重視した独自のテック人材教育プログラムの提供に注力するようになっており、2年制のコミュニティカレッジと提携している例もある(今回は、IBM社、Google社、Amazon社、Tesla社の例を取り上げた。)。また、Apple社の共同創設者であるSteve Wozniak氏は、テキサス州にあるSouthern Careers Instituteと提携し、コーディング(プログラミング)等のオンライン教育サービス「Woz U」(ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ、データサイエンスの3分野)を立ち上げており、数年間に及ぶ金銭的な負担を負うことなく誰もが実践的なテクノロジースキル教育を受けられるようにすることを目指している。
 大手テクノロジー企業以外では、ユタ州(ソフトウェア企業の立ち上げから「シリコン・スロープ」の形成へ)、ニューヨーク市(高校生・大学生が主要業界企業等で有償の夏季インターンシップを行うプログラム「Ladders for Leaders」)、米ガールスカウト(サイバーセキュリティ及びSTEM分野におけるプログラム)、Bit Source社(炭鉱労働者の再就職のためのソフトウェア開発企業)の取組を取り上げた。
 テック人材に人気の高い職場環境・待遇は、
〇柔軟なワークスタイル― 職場への出勤は週に1~2日間のみで、残りの就業日は自宅やコワーキングスペースをはじめ、最も高い生産性を上げられる場所や時間帯に自由に就業できること(高額な給与よりも魅力的な条件)
〇テクノロジーの選択権― プロジェクトに用いるテクノロジーツール、言語、ソリューション、プラットフォームなどを自由に選択・決定できること
〇職能開発プログラム― 企業はビジネスの将来を見据えて人材に投資していることを示すこと
〇職場環境の充実化― 無料の社員食堂などの設備環境。予算がなくても、ラフな服装やオフィス内ヨガ教室、ペットの職場持ち込みなど
〇エクイティの提供 (スタートアップに限定)
とされていることに加え、特にミレニアル世代(現在21~36歳)のテック人材を離職させない秘訣は働くことに意味を見出せるようにすることであり、仕事がインパクトを及ぼすと感じることが大きなモチベーションの向上につながると考えられている。
 日本企業にとっても、人手不足は長期的な経営上の課題の一つとなっており、人材の争奪戦が過熱している。一方で、パフォーマンスに応じた評価と処遇を得られることなどを理由に、向上心の高い日本のテック人材が外資系企業に多数流出する傾向がみられており、日本企業がテック人材確保戦略を構築する上で、(特にミレニアル世代を対象に)魅力的な職場環境・待遇を重視する米テクノロジー企業の取組みは一つの参考になると考えられる。

詳細

お問い合わせ

Kiyoshi Nakazawa (中沢潔)
JETRO New York (Representative office of IPA)
565 Fifth Avenue, 4th Floor, New York, NY 10017
TEL: +1-212-997-0401 / FAX: +1-212-997-0464

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