「専務のツブヤキ」
~デジタル推進人材の育成、パテントボックス税制~
2023年3月15日
SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
昨年末にIPAから デジタルスキル標準(DSS) というのが公表され、先月開催された当協会の人材委員会主催のセミナーで講演も行われました。それで今回は デジタル推進人材 などについてツブヤキたいと思います。
皆さん、デジタル推進人材ですが、 ①ビジネスアーキテクト、②デザイナー、③データサイエンティスト、④ソフトウェアエンジニア、⑤サイバーセキュリティ の専門分野別に5類型に分類されていることご存じだったでしょうか。政府(文部科学省、経済産業省、厚生労働省)では、これらの デジタル推進人材を2024年末までに年間45万人(5年間で230万人)育成できる体制を構築 するとのことです。
このため、経済産業省では、3層からなる「 デジタル人材プラットフォーム 」を構築しています。第1層は「 オンライン教育サイト 」であり、民間企業が300に及ぶ様々な教育コンテンツを「 マナビDX 」というサイトで提供しています。当協会の会員企業も何社かコンテンツを提供しているはずです。第2層は「 ケーススタディ教育プログラム 」ですが、フランスの42を参考にした データ付きのケーススタディ教材を使い受講生同士の学び合いを通じて課題解決を疑似体験 するオンライン教育プログラムです。第3層ではリアルな企業の課題を実際にチームで取り組む「 地域企業と協働したオンライン研修プログラム 」です。実際にスーパーマーケットのその日の天候や売上データをAIで分析し特定の食料品の売り上げ予測を行ったり、部品製造業が取引先から受ける発注内示のデータをもとに数か月後の実際の受注量を精緻に予測するなどの課題解決に結びついたとのことです。さらに、某樹脂加工業の企業は、研修生から見積もり自動化のためのAI活用を提案され、その後、AI自動見積もりサービスを事業化し、新規法人を立ち上げました。
私は正直この第3層について、企業機密も絡みますので、本当に(リアルなデータの提供など)協力してくれる企業があるのか疑問でしたが、企業側もDX化が待った無しの状況だったのでしょう、実際の成果に驚いている次第です。このような リアルな事例で一つ成功すれば、類似事案での横展開が比較的容易 と思われますので、上手く応用すれば会員企業のビジネス拡大にも繋がる気がします。例えば、 自治体と連携した会員企業の若手エンジニアを派遣したアイデアソン などを当協会で実施していますが、第3層の研修プログラムとそっくりだなと思った次第です。
また、先日、経産省幹部と総務委員会メンバーとの間で非公式の意見交換を行いました。その際、 パテントボックス税制 が話題となりました。皆さんご存じでしょうか。これは、 特許、ソフトウェアなどの知的財産から生じる収益(ライセンス料、知財から生じる売上による利益など)に課す税率を低く優遇 しようとするもので、欧米やシンガポールなどで導入されています。我が国にもソフトウェアが研究開発税制の対象になっていますが、今後伸びると思われるクラウドが実は自社利用扱いで対象外となっており、あまり使えていません。そもそも研究開発税制はリスクが高く実用化の見通しが立たない場合にその研究開発費を費用計上してその一定額を税額控除するものです。ということは、製品をリリースした後のソフトウェアのバージョンアップやクラウドのアップデートもそもそも費用ではなく資産として扱われますので研究開発税制は使えないのです。個人的には、ソフトウェアに対する研究開発税制の適用には限界を感じていたところ、発想の転換でしょうか、目から鱗の話でした。2月末目途に当協会は令和6年度に向けた政策要望を取りまとめたのですが、わが国でも パテントボックス税制を導入するよう政策項目として追加 することとしました。会員の皆さんも 年末の税制改正にパテントボックス税制が導入されるかどうか目が離せない と思いますよ(^^;)
最後に私事ですが、正月の金的の中り、先月の初段合格に続き、3月12日(日)に東京都(正確には東京第三地区)の弓道大会に出場したのですが、運良く第一部(三段以下)で(初段では私だけだったのですが)15位以内で入賞(13位/150~160名程度参加?:8射4中)させて頂きましたm(__)m
お陰様で弓道の方は相変わらず好調が続いている様です(^^;)
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。