「専務のツブヤキ」
~令和5年度予算・税制改正の概算要求、弓道で広がった「ありがとう」の使い方 ~

2022年9月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 例年通り、8月末に政府から令和5年度予算・税制の概算要求が出されました。経産省関係を見てみますと、予算は13,914億円で対前年度比13.7%増でした。項目を見ると、「持続的な成長を可能とする経済社会の実現」として、第1にⅠ.経済社会課題解決への大胆な官民投資のため、(1)炭素中立社会の実現、 (2)データ主導のデジタル社会の実現 、(3)経済安全保障の実現、次に、Ⅱ.挑戦を後押しする基盤の整備として、 (1)人材 、(2)スタートアップ・イノベーション 、 (3)中小企業・地域経済、最後にⅢ.国際経済秩序の再編における主体的な対外政策となっています。

 我々に最も関係がありそうなⅠ.(2)データ主導のデジタル社会の実現に関しては、480億+IPA交付金78億の内数が計上されており、①省エネAI半導体・ チップレット※ 、次世代コンピューティング等の技術開発、 東京圏以外でのデータセンター拠点整備の支援 、② サイバーセキュリティ対策の推進、デジタル人材の育成 、③モビリティや企業間取引、スマートビル等の分野におけるアーキテクチャ設計・データ連携基盤の構築に充てられるとのことです。データーセンターについては、 5G 導入促進税制を活用して地方を含めた基地局整備の加速化、日米連携による5G 基地局の第三国展開 を進めるため、新規に20.0 億円が要求されています。また、※にあるチップレットという言葉ですが、 集積回路を構成するCPUやGPU等について、機能ごとの複数のチップに分割製造してパッケージ化する技術で集積回路を一つのチップ上で生産する従来製法と比較して、コスト低減と高性能動作の両立が可能 とことで、恥ずかしながら私も初めて知りました。さらに、詳細は省きますが、デジタル化の進展や国際情勢の変化、サプライチェーンリスクに対応したサイバーセキュリティ対策の推進・対処能力向上を進めるとして、色々と予算の増額、新規要求がされています。

 次にⅡ. (1)人材ですが、31億円(+11億円)要求 されています。中身は、①大企業等人材の出向起業・リカレント教育支援、企業における人的資本経営の推進等、フェムテック活用等による人材多様性確保、②デジタル活用による教育システム改革の促進、学校外の民間教育の場(サードプレイス)整備、教育/EdTech産業のイノベーション創出支援となっています。さらに同じく (2)スタートアップ・イノベーションも180億円(+115億円)+JETRO交付金290億の内数(+35億円)が要求 されています。内容は、①スタートアップの海外展開支援、海外から国内への起業家等の呼び込み、地方におけるスタートアップ・エコシステムの強化、②研究開発型スタートアップの創出・成長の加速のため、人材発掘・育成、経営人材確保、実用化開発等の支援の実施となっています。思うに、 人材及びスタートアップ関係はかなり増額要求されているという印象 です。

 税制改正については、 地域未来投資促進税制の拡充(特別償却20~50%又は税額控除2~5%)及び延長(令和6年度末まで2年間) (所得税・法人税・法人住民税・事業税)です。これは地方自治体と連携して、地域経済を牽引する企業の成長を促進すべく、 地域企業のデジタル化促進や戦略的な産業群の維持・強化 等のための税制優遇措置ですが、 対象となる資産にソフトウェア等を追加される点が注目 です。

 ここで、話は変わりますが、私は5月から弓道を始めておりますが、ビジネスと異なる新たなコミュニティに参加して、今更ながらといいますか、新鮮な気付きを得ています。例えば、私の場合は、ビジネスでは、 ミスを指摘されると「すいませんでした」(謝罪の意)、指示・助言されると「わかりました(^^)/」(了解の意) と答える癖があります。ある時、弓道場で私は自分がすべきことを忘れて、ある方に代わりをしてもらってしまいました。私はその方に当然「すいませんでした」と謝りました。その時、いつも親切にあれこれ教えてくれるYさんから、「笹岡さん、そういう時は単に『ありがとうございました』といえばいいんですよ」と言われたときにハッとした訳です。 弓道場では全て「ありがとうございます」とまず感謝の意を伝える んです。私は40年ぶりに弓道を再開した初心者同然ですから、色々と体配(弓道の所作のこと)を間違えることも多いですし、射形を先生から直されることが多いのですが、ミスの指摘であれ、指導・助言であれ、そのことに感謝なんです。ただ、まだビジネスに身を置いているせいもあり、今でも道場で つい「すいません」、「わかりました」と連発していまします が、、、一方、最近、家では家内の何気ない気配りに対してこれまでは当たり前と思って無言でしたが、(彼女が気付いているかどうかわかりませんが、) 弓道を始めて何故か自然と家内に「ありがとう❤」と言えるようになりました (^^;)

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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