「専務のツブヤキ」
~最近のデジタル政策の動向 ~

2022年5月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 ここ最近IT・デジタルから離れていましたが、この3月から4月にかけて、デジタル田園都市国家構想実現会議(3/15)、デジタル臨時行政調査会(3/30)、産業サイバーセキュリティ研究会(4/11)が開催されており、大まかな動向についてツブヤキたいと思います。

 実現会議では、経済産業省からは、中小企業のデジタル化・DXの推進について、令和3年度補正及び令和4年度当初予算の事業が説明されました。まず、中小事業者のデジタル化のレベルは、単に紙のPDF化、 電子メールやオンライン会議のツールを導入する「電子化」段階 から、 在庫管理システムや生産工程にロボットを導入するなど「デジタル化」段階 、そして AIの導入を通じたビッグデータ化による生産工程の完全自動化などの「DX」段階 まで様々ですが、それぞれに応じた取り組みが必要です。

「電子化」または「デジタル化」の段階の中小企業に対しては、

① 「気づき」の機会についてはデジタルガバナンスコードの実践手引きやWeb上での診断ツールの提供及びその診断結果に基づくコールセンター対応などの適切な支援等の予算【R3補正「事業環境変化対応型支援事業」130.4億円の内数】が措置されました。特に 中堅・中小企業向けにデジタルガバナンスコードの実践手引きはすでに以下のURLで公開されていて、かなり優れモノ だと思います。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/tebiki.pdf

② IT導入補助金も 電子インボイス制度への対応には3/4補助 クラウド使用料の最大2年分まで支援 が措置されました。【R3補正「中小企業生産性革命推進事業」2,001億円の内数】

③ 電子受発注システム普及促進も業界共通EDI策定やその実証事業の実施の費用が計上されています。【R3補正「電子受発注システム普及促進に向けた実証事業」(「取引適正化等推進事業」8億円の内数)】

さらに「DX」段階まで含めた高度な事業者に対しては、「地域DX促進活動支援事業」の「地域未来DX投資促進事業」(R4当初予算15.9億円の内数)において

④ 企業が抱える多様な課題に対応するため、地域の産学官金が参画する支援コミュニティを立ち上げ、企業のDX実現に向けたサポート(DX戦略策定の伴走支援、ITベンダーとのマッチング等)を実施するとともに、地域未来投資促進法等も活用し、地域の主体的な取組として定着を図る事業

⑤ 地域の特性とデジタル技術を活用した新事業の創出に取り組む実証プロジェクトに要する費用を補助する「 地域デジタルイノベーション促進事業 」( 公募期間:4月21日~5月31日

などが予算計上されており、当協会のDX推進研究会などで活用できないものかと思う次第です。

 デジタル臨調では、昨年12月に策定した5つのデジタル原則( ①デジタル完結・自動化原則、②アジャイルガバナンス原則、③官民連携原則、④相互運用性確保原則、⑤共通基盤利用原則 )に沿って、原則への適合性点検・規制の見直しを実施中です。例えば、代表的なアナログ規制として考えている ①目視規制、②定期検査・点検規制、③実地監査規制、④常駐専任規制、⑤書面掲示規制、⑥対面講習規制、⑦往訪閲覧・縦覧規制 の7項目の法律等(約5,000条項)について、規制手法の類型化と技術適用段階による整理を完了しています。また、これら7項目の見直しに加え、経団連等を中心とした経済団体より約1,600件の規制緩和要望を受付け、類型化を行い、横断的な見直しを実施することを目指しています。6,600(5000+1600)ものアナログ規制がデジタル化されれば、相当な労力・コストの削減になると思いますので、このデジタル臨調の今後の作業には大いに注視し、且つ期待したいと思います。

 産業サイバーセキュリティ研究会では、昨今の情勢を踏まえたサイバー攻撃事案の潜在的なリスクの高まり(サイバー脅威の常態化 “Cyber New Normal”)から、以下の6つの処方箋が提示されました。

① サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)の具体化

ソフトウェアの脆弱性対応強化(脆弱性情報の共有、SBOM)

医療分野での対応(SBOM、お助け隊)

④ 「開発のための投資」から「検証のための投資」へのシフト

⑤ サプライチェーンセキュリティ確保のための産業界一丸となった対応

⑥ Like-mindedの関係強化(国際情勢)

当協会(≒SoftwareISAC)としては、特に SBOM絡みの②や③に注目 していきたいと思っています。

いずれにしろ、

① 「電子化」→「デジタル化」→「DX」の段階まで一気通貫の予算措置

② デジタル規制改革

③ サプライチェーンを意識したサイバーセキュリティ対策の強化

が最近のデジタル政策の大きな柱と思われます。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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