「専務のツブヤキ」
~デジタル化のハードルはAD変換?、令和3年度補正予算への期待~

2021年12月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 昨今、社会のデジタル化が叫ばれていますが、最近、 私は人の五感のインターフェイス(目、耳、鼻、舌、手指足)はアナログであり、人が脳で行うAD(アナログ⇔デジタル)変換がデジタル化を妨げるハードル になるのではないかと思ってます。例えば、腕時計、私は数字(デジタル)表示よりも針(アナログ)で表示される時計の方が好きです。無意識に数字を頭の中で針の時計をイメージして時間を認識している気がするからです。それなら、最初からアナログなセンサーである目で針を見て時間を認識する方が楽な気がするからです。

 その意味で、 デジタル化において、社会(デジタル)と人(アナログ)とを結ぶUI、UXは非常に重要 ではないでしょうか。逆に、社会でIoTが進展し、デジタルで直接制御できるビジネス分野などにロボットやAIが進出すれば、人の負担(ストレス)は減るのではないでしょうか。さらに言えば、 アナログである 人がデジタルを意識(AD変換)しないといけない様ではダメ な気がします。ですから、例えば生体認証や直感的な動作(含む手書き入力)など インターフェイス(入出力)は人にストレスを与えないアナログで行われ、裏方でデジタル処理は行うようなUI、UXが理想的ではないかと今後に期待 する次第です。それは「誰一人取り残さない」とするデジタル庁の方針にも沿っているかと思います。

 さて、話は変わりますが、11月26日に令和3年度の補正予算が決定され、その予算総額は補正予算として過去最大の35兆9,895億円でした。経済産業省の補正予算額も5兆4,290 億円と本予算の3倍くらいではないでしょうか、その内、注目し、期待する2つの項目についてツブヤキたいと思います。

 Ⅳ.「 デジタル田園都市国家構想 」では、 生産性革命推進事業で2,001 億円 が計上され、その中にはモノづくり補助金( デジタル枠も出来ているところに注目です! )とともに、「IT導入補助金」も含まれています。IT導入補助金は、会計ソフト、受発注システム、決済ソフト等の ITツールに対しては、50万円までなら3/4、50~350万円までなら2/3の補助率 と手厚い内容です。また、これまで汎用性があり過ぎるとそれ単独では認められてこなかった PC、タブレット等に対しても10万円を上限としてその1/2が補助 されます。さらに、インボイス制度への対応を見据えて、 クラウド利用料もなんと2年分まとめて補助 するなど企業間取引のデジタル化を強力に推進する内容となっているのが印象的です。

 また、レジリエンス強化、データ通信の最適化のため データセンターの地方拠点整備に71億円 【電力・通信インフラ整備、地域拠点用地整備】、社会人のデジタル知識・能力の習得に役立つポータルサイト(オンライン教育サイト、コンテンツ作成)を構築し、 現場研修等の実践的な学びの場の提供に向けて案件を組成する地域デジタル人材育成・確保推進事業【デジタルスキルレベルの可視化も含む】に14億円 が計上されています。

 次に、Ⅴ.半導体産業基盤緊急強化パッケージですが、熊本でTSMCに使われるであろう先端半導体の国内生産拠点の確保で6,170億円、ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業で1,100億円、AIや量子技術などを対象とする経済安全保障重要技術育成プログラムに1,250億円などが含まれています。でも、私が注目しているのが、 これらが NEDO法を今回改正して基金を造成する方式 になっている点です。基金ですので翌年度で使い切らなくてもよくなりますので、IT導入補助金と同様に 基金方式で 政策の機動性は飛躍的に高まった と言えます。また、 補正予算の基金化はある意味でIT導入補助金が道を開いたとも言え、当協会の政策要望が少しはIT政策全体に貢献 したのではないか?という気もする次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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