「専務のツブヤキ」
~半導体・デジタル産業戦略、文部科学大臣賞受賞、企業版ふるさと納税?~

2021年4月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 新年度が始まり、幸先よく、4月6日、当協会会から推薦した さくらインターネット(株) 様が「 学校への授業支援によるプログラミング教育の普及啓発 」という業績で「理解増進」部門において見事に 文部科学大臣賞を受賞 されました。当協会は2020年度からプログラミング教育が小学校で始まることを見据えて、当協会の 田中邦裕副会長(さくらインターネット㈱代表取締役社長)を委員長として2016年8月にプログラム教育委員会を立ち上げ 、これまで様々な活動をしてきており、今回の受賞にも貢献しました。心よりお祝い申し上げます。

 最近、漏れ聞くところによれば、とにかく、米国、中国、欧州は官民挙げてデジタル化への研究開発投資を進めており、それを受けて経済産業省でも半導体・デジタル産業戦略が本格的に検討されているようです。というのも、近い将来確実にデジタル化の進展により、あらゆる局面でフィジカル空間のセンサ/エッジデバイスから膨大なデータが取得され、5G通信システムを通して情報処理機拠点(データセンタ、エッジサーバ)に伝達されようになります。そうなると、これらのビッグデータを各段階で適切に処理・解析し、フィジカル空間にフィードバックすることで価値を生み出すことが前提となる社会が訪れ、そこでは、 あらゆる分野でAIが組み込まれる とともに、 一連のプロセスに関与する全ての機器を半導体が支える こととなるからです。一方、我が国の主要なデジタル技術の国際競争力は 米国や中国に比べビジネス展開やAI分野の研究者数、越境するデータ量、移動通信インフラ機器の日系ベンダーのシェアなど見ても大きく水をあけられています 。従って、今後は、「 デジタル産業 (クラウド、サイバーセキュリティなど)」、「 デジタルインフラ (データセンター、5Gなど)」、「 半導体 (先端的な集積回路)」という大黒柱の強化が必要です。ただ、我が国の国力、リソースには限りがあり、米国、中国とあらゆる分野で競い合っても勝ち目はありませんので、ハードの半導体では、我が国が強みを持つ、 先端的なロジック、パワー半導体、CMOSイメージセンサー、NANDメモリー などの分野に注力し、 ソフトウェアではAI分野を磨く という選択と集中が今後の方向性として重要ではないでしょうか。デジタルインフラでは特に データセンターの国内立地が今後推進 されべきですが、我が国は地震大国ですので、 災害時も事業者が万全の対策をとれるよう国も適切に支援 すべきと考える次第です。

 最後に、話は変わりますが、 地方拠点強化税制 って皆様ご存じでしたでしょうか?先日、政府の担当部局から令和3年度で租税特別措置が切れるので、延長するかどうかも含めて意見を聞きたいようでした。おそらく、会員企業の皆様は地方に拠点を出すときなどに地元の自治体から色々助成措置を伺うと思いますが、その際くらいにしか耳にしないと思います。私は昔、立地公害局立地指導課で工場や事務所の地方立地を促進する担当でしたので懐かしいなあと思いながらお相手をした次第です。

 そこで、今年度で期限が切れる当該税制ですが、企業が本社機能の全部/一部を、 東京23区から地方に移転(移転型事業) する場合や 地方で拡充/東京23区以外から地方に移転(拡充型事業) する場合、 オフィス減税(特別償却【25%(移転)又は15%(拡充)】or 税額控除【7%(移転 )又は4%(拡充)】)や雇用促進税制【初年度の税額控除で一人当たり最大90万円(移転)又は30万円(拡充)】の適用を受ける ことができます。 

 もちろん、コロナ禍で本社オフィスの縮小、オフィス=自宅という感じでテレワークが普及している状況ですから、 この税制自体は是非延長 してほしい と思います。また、私が当協会にきてすぐに、Q社が東京から社長の地元である和歌山の白浜に本社を移転したことや先日名古屋出張でC社の社長も東京から社長の地元の名古屋に昨年本社を移転したとの話を思い出しました。例えば、 社長の地元(ふるさと)に本社機能を移転又は拡充する場合にさらに深堀して優遇 してあげれば、本社機能の東京から地方への移転が一層促進されるのではないかと思った次第です。特に、菅総理はふるさと納税の立役者ですから、 企業版ふるさと納税と銘打てば、彼の受けも良い のではないでしょうか。また、衆議院選挙も近いですし、私的には選挙公約にも打ってつけとも思うのですが、、、という気もしています(^_^;) 地方拠点強化税制、今後も目が離せないと思った次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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