「専務のツブヤキ」
~第4次産業革命に向けた人材育成はCSAJの双肩にかかってます~

2017年7月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 昨年の11月にCSAJの政策委員会から「 『働き方改革』に関する政府への要望について 」という4項目からなる要望書を出しましたが、これがその後色々と発展し、CSAJの事業にも結実するとともに、当業界に多大な裨益ももたらしつつあります。
 要望書の中ではまず、如何に働き方改革を進めても、サービス開始前には、予期せぬトラブルやシステム改修なども発生するため、その対応に一時的には100時間を超えるような残業が必要になることもあるので、そのような特定の状況においては、長時間の労働が簡潔な手続きで認められる制度など労働規制の柔軟性は非常に重要と考えている旨主張させて頂き、例えば 36協定の労働時間の上限規制における例外措置の撤廃など一律の労働規制は当協会会員企業の実態にはそぐわない ものと要望させて頂きました。ただ、その後、電通での過労死自殺の事件がマスコミ等で大きく取り上げられ、最終的には 単月で最大「100時間未満」の線で労使決着 し、報道によれば今秋臨時国会で労働基準法の改正が行われる予定のようです。残業時間の上限も当初原則45時間/週までという意見もあったようですが、 60時間まで認められること になり、当協会の要望がある程度と通ったように思えます。
 次は柔軟な働き方についてです。具体的には、 テレワークの導入、高齢者等を含めた柔軟な再雇用制度、公正な人事評価に役立つITスキルの『見える化』(iCD【i コンピテンシ ディクショナリ】の普及促進)、副業の自由化 などの環境整備や制度導入への支援をお願いしました。当協会としても『先ず隗より始めよ』ではありませんが、今年2月に『働き方改革宣言』を公表し、 2020年までに会員のテレワーカー率30% を目標とするとともに、「働き方改革研究会」も設置し、 テレワークガイドラインの策定 を検討中です。また、 7月から当協会の職員全員が目標として週1回の在宅でのテレワーク を始めています。スカイプを使えばその場で会話もできますし、 携帯電話も内線化 し、どこで働いているかは意識しなくてもすむ環境が実現できています。
 3番目はセキュリティ人材の育成です。要望書においては、2020年、東京でオリンピック・パラリンピックの年ですが、当協会では既にITの素養のある人材(例えばSIer)に対して比較的短期間のセキュリティ技術に関する再教育(スキル転換)を行うことにより、不足するセキュリティ人材を短期間で育成できるように、経済産業省に対して厚生労働省等と連携してこのようなセキュリティスキルに対する再教育カリキュラムの作成及び当該カリキュラムを活用してスキル転換を行う労働者及び企業に対する支援をお願いし、水面下で当協会が協力していたところ、今年4月、ようやく経済産業大臣が「 第4次産業革命スキル習得講座認定制度(仮称) 」を創設する旨発表し、当協会の念願が結実しました。今後は当該認定講座を厚生労働省の 専門実践型教育訓練給付金【対象講座の受講料の7割(年間最大56万円、3年間で168万円)を助成】 の対象講座とする方向で調整が進む予定であり、引き続き当協会としてもこの調整過程において経済産業省に協力していきます。順調にいけば、 来年4月から給付金付き(受講料の最大7割助成)の大臣認定講座が実現 する予定です。これにより、セキュリティ人材の育成が相当加速されるものと期待しています。
 最後は、長期的な課題ですが、IoT、人工知能(AI)、ビッグデータなど第4次産業革命の本命を担う人材の育成についての要望でした。今後、登録された知識データと収集した内外のビッグデータを結びつけ、解析して実務に生かす仕事も大幅に増え、システムエンジニア(SE)のみならず、事業会社の企画、営業、事務といったビジネス関係の職種もそれに対応した人材が必要になります。従って、経済産業省に対してこのような新たな仕事に取り組める人材の育成も積極的に推進して頂くようお願いしていました。その後、経済産業省と水面下で相談していたところ、同省の支援を得て、 当協会がそのような第4次産業革命を担う人材を育成する教育訓練講座を開発するために厚生労働省から今後3年間で5千万円ほどの資金的支援を得る こととなりました(下図)。同省のお墨付きを得て開発される当該教育訓練講座は教育訓練給付金の対象になることでしょう。このように 第4次産業革命人材の育成は当協会が開発するこの教育訓練講座にかかっている といっても過言ではありません。ある意味、当協会は第4次産業革命を支える最重要団体の一角を占める存在になったと私は思っています。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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