「専務のツブヤキ」
垣間見た情報産業の実態 -アベノミクスの効果は及んでいるか?-

2016年7月1日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 6月8日に当協会の専務に着任して早1ヶ月が過ぎようとしています。挨拶回りも、経済産業省から始まり、総務省、内閣サイバーセキュリティセンター、文部科学省などを回りました。経済産業省では 情報セキュリティ政策室がサイバーセキュリティ課と格上げされ、情報処理振興課と同格 となりました。時代の流れを感じざるを得ません。
 先日、情報産業労働組合連合会の方が来られて、今年もソフトワーカー労働実態調査を行うので当協会も調査票の回収率(現在千社程度に調査票を送り300社程度が回答)が上がるよう協力してほしいとのことでした。その際、昨年2015年の同調査報告書を持ってきましたので、その内容を見てみると結構業界内の労働者の実態がよくわかり、興味深かったのでコラムを通じて皆様にもほんの一部ですが、ご紹介したいと思います。
 まず、情報産業の経営者の8割以上が認識している経営課題としては、『技術者の人材育成(92.8%)』、『メンタルヘルス対策(87.7%)』、『新規技術への対応(87.1%)』、『業界変化等にあわせた戦略の見直し(85.8%)』、『災害等に対する危機管理の見直し(81.1%)』とのことでした。やはり、 ほとんどの社長が労務管理を含めた人材の問題や震災の影響でしょうか、危機管理への関心が非常に高い とのことでした。
 次に、資格別賃金を見ると、平均で一般職(平均:31.8歳)が23.8万円程度、係長・主任相当(平均:40.5歳)が31.3万円程度、課長相当(平均:45.8歳)が41.9万円程度、部長相当(平均:50.1歳)が46.1万円程度でした。同様に職種別にみると、平均でプログラマー(平均:28.2歳)が22.0万円程度、アシスタントSE(平均:33.3歳)が25.1万円程度、システムエンジニア(平均:39.6歳)が30.6万円程度、プロジェクトリーダー等(平均:44.4歳)が38.9万円程度、システムコンサルタント(平均:48.9歳)が46.4万円程度でした。これを見ると、 40歳位で係長・システムエンジニア、30万円程度、40歳位で課長・プロジェクトリーダー、40万円程度、50歳位で部長・プロジェクトリーダー、46万円程度というのが平均像 というのがわかります。
 アベノミクスとの関係で採用賃金、賃上げというところも見てみましたが、安倍政権になった以降、2013年採用と2015年採用を比べてみるとわずかですが、高卒(164⇒166千円)、短大卒(178⇒179千円)、高専卒(180⇒183千円)、大卒(198⇒201千円)と、 全ての学歴で採用賃金の平均値が1~3千円増えていました。 賃上げ状況を見てみますと、2013年以降、 賃上げした企業の割合も88.5%から96.0%と限界に近いところまで上がっています し、 賃下げ企業にいたっては2013年以降、ゼロが続いています。 これを見る限り、十分といえるかどうかはわかりませんが、 情報産業で働いている労働者にはある程度アベノミクスの恩恵は届いている のではないかという気がしました。
 2016年度の調査結果も楽しみですが、今年は調査を2か月前倒しし、調査票の提出締切が今月、7月20日(来年1月頃公表予定)だそうです。当協会の会員にも調査票が送られているかもしれませんが、できる限り調査には期限までに協力して頂ければ幸いかと思った次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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