「愛と繁栄を実現する経営改革」会社を必ず成長させる”値上げ戦略”!

2018年11月1日

CSAJ 監事 戦略経営コンサルタント 公認会計士 山田隆明

 値決めは経営である。
安易な値引きをやめるだけで、業績は格段に向上する。
値上をできれば効果は絶大なものになる。
まず効果の絶大さを数字で実感いただき、次に値上げの仕方を考える。

<値上の効果>
Q1. (値引をやめる効果)
10%の値引をすると、どれだけ多く売らないと利益を維持できないだろうか?
粗利率は30%とする。
*ヒント
(値引前)
売上高 100 (=10円×10個)
変動費  70 (= 7円×10個)
差引) 粗利 30 (= 3円×10個)
10%引の単価9円で売っても30円の粗利を維持するには、販売数(当初10個)は何個必要かを計算しよう。
A1.
(値引後) 
売上高 9X (=9円×X個)
変動費 7X (=7円×X個)
差引)粗利 30 (=2X)
これより、X=15個となり、値引前の10個に比べて50%増である(*)。
すなわち、安易に10%値引してしまうと50%も販売数を増やさねばならなくなる。販売数50%増とは単純に考えると仕事量も50%増だ。1日6時間で済んだのが9時間やらないと追いつかなくなる計算になる。

Q2. (値上げする効果)
上記の設定で10%値上げすると販売数はどれだけ減らせるだろうか?
*ヒント
上記値引前の金額に対して、
10%高の単価11円で売って粗利30円をあげるには、販売数は何個かを計算しよう。
A2.
(値上後) 
売上高 11X (=11円×X個)
変動費 7X (=7円×X個)
差引)粗利 30 (=4X)
これより、X=7.5個、すなわち値引前の10個と比べて25%減らしても利益を維持できる。

Q3.(値下と値上の相乗効果)
では、この値上げと先ほどの値引の相乗効果、すなわち10%の値引きをやめ、かつ10%値上げを行うと効果はどうなるだろうか。
A3.
値引すると15個売らねばならなかった、それと比べればこの7.5個は半分にあたる。
つまり、10%の値引きをやめ、逆に10%値上げをすると仕事の量は半分で済む。
先ほどの1日9時間が4時間半に減る計算になる。

Q4.(固定費の影響)
固定費まで考えると値上の効果はどうなるだろうか?
A4.
売上数量が半分に減れば、クレーム処理が減る、販売促進活動も減る、残業代が減るなどいろいろと固定費が減る。すぐには減らせられなくとも、徐々には減っていく。
このように固定費まで考えると、値上の効果はもっと大きくなる。

<値上の仕方>
 値上げするにはどうすればよいか。
以下のやり方がある。
(1)「安くしないと売れない」との思い込みをやめる。
(2)商品説明をしっかりと行い、良さを理解いただく。
(3)値引き要求への切り返しトークを整備しておく。

そしてなにより大切なことは、
(4)「顧客価値」に見合う価格設定をすることである。
「顧客価値」とは、
“顧客が、自分の要求がかなうなら支払って良いと考える金額”である。
たとえば、車の購入を検討している人が、実は「静かな車」を要求していて、静かな車になら150万円支払っても良いと考えているとする。このときの150万円がこの顧客の「静かな車に対する価値」である。
一方で普通の車には100万円の支払しか考えていないとすれば、「普通の車に対する価値」は100万円である。となると、営業がいくら頑張っても100万円以上の値段では売れない。だから営業にとっては「顧客価値の把握」が大切になる。
 重要なのは、”こちらがお客さんの要求をかなえれば、お客さんはより多くのお金を払ってくださる”ということだ。
ここから、”「顧客価値」に見合う価格設定をするにあたり把握すべきこと”が自ずと見えてくる。それは、「お客さんの要求は何か」、「その要求に対して、当社はどういう強みを活かしてお応えできるか」、「競合他社はどうか」である。
 いろいろと書いたが、要は「お客さんの立場になって親身に対応すること」だ。
そうすれば相手も心を開いてくれる。その瞬間、相手から見てこちらは「敵」ではなくなり、一緒に悩み事を解決してくれる「味方」になる。精神論的で恐縮だが、「”儲ける”とは文字どおり信者を作ることだ」というのはこのことだ。
ポイントは、この「お客さんの立場になって・・・」を面倒がらずにやるかどうかだ。
値引でしか勝負できない会社は、いつも忙しく余裕がないので、お客さんにいちいち構っておられない。だからダメなのだ。「貧乏暇なし」とはこのことだ。

 値上のメリットをさらにあげれば、
・値上げすれば良質な顧客や富裕層の顧客が集まってくる。
・こちらも高度な要求に応えるよう益々お客さんの立場になり親身になるから、より信頼が増す。

 以上より、値上げをすれば、(1)時間的な余裕が生まれ、(2)良い顧客に恵まれ、(3)顧客と良好な関係を維持できるようになる。
こうなれば、会社は必ず成長し発展していく。

(注)*設例の数値を値下分岐点と言う。これは粗利率によって変わる。だから、”粗利率”と”値下率”さえ決まれば求められる。
そこで、横軸に”粗利率”を、縦軸に”値下率”をとると、たった一表であらゆるケースに対応した値下分岐点を表示することができる。この表を「値下分岐点表」という。
*値上も同様、「値上分岐点表」。

(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

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日時 11月6日(火) 14:00-16:00
会場 わくわく経営株式会社 セミナールーム
受講料 無料
詳細・お申込 https://www.wk2.consulting/セミナー/

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
わくわく経営株式会社 代表取締役
戦略経営コンサルタント 公認会計士

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。
株式会社インテックで10年間基幹システムのマーケティングおよび営業。
その後公認会計士を経て、
現在:戦略経営コンサルタント、わくわく経営株式会社 代表取締役。
“社長がワクワクしながら、意気込みをもって、本気で経営に取り組める”お手伝い。
コンサルティング内容:

  • 「ブルーオーシャン戦略」立案支援
  • 「経営計画」立案支援
  • 「経営管理PDCA」実践支援

2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

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