「愛と繁栄を実現する経営改革」”PDCA”から”APDC…”へ

2018年8月1日

CSAJ 監事 戦略経営コンサルタント 公認会計士 山田隆明

 管理のサイクルの呼び名としてすっかり定着した感のある”PDCA”だが、実際に回し切れている会社はまだ少ないと思われる。
 念のためPDCAとは、Plan(経営計画)、Do(実行)、Check(原因分析)、Action(対策実施)のサイクルを回すことで経営管理を行うものである。
すなわち、「成り行き経営」から脱し「管理された経営」を実現するツールである。

 回し切れていない原因は主に3つあると思う。
 第1は、そもそもP(経営計画)の”作り方”にある。
経営計画の正しい作り方は、先に経営「戦略」というものがあってその内容を踏まえて作るものだ。すなわち経営戦略を数字に落として作る。
しかし正しくやっている会社は稀だ。多くは、経営戦略を無視していきなり数字作りをしている。
私には、これでなぜ数字を作れるのかが不思議でたまらない。「鉛筆をなめて、えいやぁ」で作っているとしか思えない。
だとすると、こうして作ったものが、現場の社員から受け入れられるわけがない。
受け入れられないから、積極的な協力が得られず先に進めない、結果的にPだけで止まってしまうのだ。

 第2は、P経営計画の”目的”にある。
経営計画は、経営に役立てることを目的に作るものだ。
しかしそういう目的で作るケースはむしろ稀のようだ。多くは、銀行から融資を受けたり、役所から助成金を受ける目的で作る。銀行や役所から提出を求められるからだ。
だから提出することが目的になってしまい、その後のDCAに力が入らない。
そもそも、会計と同様に経営計画にも2種類ある。(1)外部公表用と(2)経営用だ。
銀行や役所向けは(1)外部公表用だ。これは(2)経営用とは別物だ。
(2)経営に役立つものにしたいなら、PDCAを回し切らなければダメだ。

 第3に、”PDCA”との呼び名も影響していると思う。
重要性からするとAが一番重要だ。Aを行うためにPDCがあるからだ。
にもかかわらずPDCAと呼ぶから、最初のPに全力投球し、Dに至って力尽きて終わってしまう。
しかし、ここで終わったのでは単なるムダだ。それどころか弊害だ。「未達者を叱るだけ」で会社の雰囲気を悪化させる、一歩間違えればパワハラにもなりかねない。
これは、Cまで行って終わっても同様だ。「未達者を叱る」に「犯人発見」が加わるだけだ。
 そこで私は、PDCAでなく”APDC…”と呼ぶよう提案したい。
(…は循環。”APDC…”で「APDCサイクル」と読む)

 思えば、もう30年以上になるが、私が新卒で入った会社では「PDS(Plan,Do,See)」と教わった。同社の社長はこの方面の専門家だったので、決してこの会社だけが遅れていたという訳ではない。
その頃と比べるとツールとしては進歩したものだ。
しかし、今後はもっと進歩させ、回し切るよう実践させねばならない。
「APDCサイクル」を回し切ることが経営者の最も重要な仕事だからだ。


(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田経営会計事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテックで基幹システムの営業を10年勤めた後、公認会計士に。
監査法人勤務を経て、独立会計事務所所長も。
現在:戦略経営コンサルタント、わくわく経営株式会社 代表取締役。
コンサルティング内容:

  • 「経営戦略」から落として数字化して作る「経営計画」
  • 「APDCサイクル」の実践
  • 経営に役立つ「未来会計」

2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

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