「愛と繁栄を実現する経営改革」企業目的と一気通貫な経営計画を!

2016年9月1日

CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明

 経営資源を効率的に活用するのが経営である。経営資源には限りがあるので、「広く浅くまんべんなく」活用したのでは分散されてしまって効率的ではない。効率的に活用するには「狭く深く、集中投入すべき」である。それには、「自社の強いところ、相手の弱いところ」に投入すべきで、「広く浅くまんべんなく」「弱みを克服する」べきではない。
反論もあろう、狭く深く集中したのではそれ以外のところが手薄になるからダメだと。しかし、営業マンが全取扱商品を担いで闇雲に全エリアを走り回ったのでは、こちらが一件一件の見込客に与えるインパクトが小さくなってダメなのに加えて、ライバルからも攻め込まれる余地が大きくなってしまい二重の意味でダメである。正しい方法は、まず強いところに資源を集中させてそこでナンバーワンになり、そこで稼いだヒト・モノ・カネの経営資源を次に強いところに投入してそこでもナンバーワンになる、こうして順次広げていくやり方である。
S社は従来から個人向けが強く法人向けは弱かったが、偶然に法人向けの大口受注が一件来たことから法人向けに味をしめてしまった。以後社長自身は法人向けに専念するようになり、さらに法人向け営業マンも多数採用した。しかし偶然は何度も起こるものではない。もともと弱い法人向けは以後一向に受注がなく、業績は一気に下降に向かっていった。私に声が掛かったときには、会社はもう危機的状況にまで陥っていた。それでもまだ法人向けをやめようとしない、そこで、過去2年間の得意先別売上粗利リストを作り、法人向けはこんなに手間暇コストをかけてもダメな反面、個人向けはほとんど手間暇コストをかけていないのに順調に成果を上げている、貴社の強みである個人向けにもっと力を入れるべきと説得した。
 では、限られた経営資源をどこに集中投入するか?それが戦略である。戦略を立てるには、(1)自社の強み(2)マーケットニーズ(3)ライバルの弱みを調査する。そして、何を売るか・何を捨てるか・どこに売るか・誰が売るか・どうやって売るかを具体的に決めていく。この(1)~(3)を調査する方法は、「お客様の声」を聞くことである、これしかない。なぜなら、取引するかしないかの決定権は100%お客様側にあるからである。すなわち、数ある売り手の中でお客様の要求に応える売り手だけが選ばれるのである。だからお客様の要求を徹底的に調べあげなければならない。
戦略を決めたら売上数字・利益数字を計画し、経営計画を作る。これを文書化して経営計画書にする。また管理のためのPDCAチェックリストも作る。こうして経営計画を立てて達成に向けた管理をすることこそが経営者の役割である。
上述したS社も私がお手伝いして、強みを活かす戦略にもとづく経営計画を立てPDCA管理を行った結果、翌年からは大幅に黒字転換し危機は去った。
 最後に、会計事務所の役割は何かを考えると、経営者の経営計画立案を手伝うことと思われるが、多くの会計事務所は役割を果たしていない。彼らは、売上○○%増・コスト○○%減を目指して頑張りましょうなどと指導する。頑張りましょうで済むなら苦労はない、こんなものは単なる精神論にすぎず何の実体もない。何を売るか・どうやって売るかなどの具体的な戦略がないからである。
売上○○%増・コスト○○%減を目指すのは、単に実体がないだけでなく危険をはらんでいる。なぜなら、追及すべきは自社の利益・売上ではなくお客様の利益のはずであり、削減すべきはコストではなくムダのはずだからである。お客様の利益を追求せずに自社の利益を追求したのでは、お客様の満足など得られるはずがない。お客様の満足をあげるに必要なコストまで削減したのではお客様から信頼されるはずがない。彼らの指導は、一番大切な「顧客満足」と「信頼」を失わせてしまう。私にはこんな「エセ先生」の指導を受けた経営者が気の毒でたまらない。
「エセ先生」と「まっとうな先生」を見分けるポイントは、「強み追求という正しい戦略を具体的に」指導できるかどうかである。

(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

PAGE TOP