「愛と繁栄を実現する経営改革」失敗するパターン5:おカネを捨てる

2016年4月1日

CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明

 おカネは直接増やそうとしても増えません。
おカネというものはモノの動きあるいはヒトの動きの結果として動くものだからです。
ですから直接おカネを増やそうとすべきではなく、正しくは良いモノを提供するよう努めること、その結果貯めたおカネをムダ遣いしないことです。
 にもかかわらず多くの経営者が、直接おカネを増やそうと力を注ぎます。
そしてやってはいけない事をします。誤った節税対策などがこれです。それが裏目に出てかえっておカネを失います。
この時点で自分の誤りに気が付けばよいのですが、多くの場合には気付かず、ただなぜかおカネが減ったことだけに気付きます。そして何とか挽回しようとおカネの調達に走り、またやってはいけない事をします。誤った銀行借入などです。やはり裏目に出て結果的にますます窮乏します。
最後は起死回生の新規事業進出など無謀なことに出るという悪循環です。
 このような誤ったおカネの使い方をしていたのでは、せっかくモノやヒトに秀でた優良企業であってもどんどん悪い方向へ向かってしまいます。
 繰り返しますが、企業の目的はおカネではなく、良いヒトを育成し、良いモノを提供して、顧客満足に応えることにあります。結果としておカネが増えるのです。おカネを直接追求してもおカネは増えず、逆に去って行ってしまいます。

では、「やってはいけない事」とは何か、なぜいけないのか。

1.誤った節税対策
「今期は黒字の見込だから、節税対策としてこの支出をしよう。」というパターンです。
たとえば交際費を500万円使えば、課税所得が500万円減り、納税額は(税率を30%とすると)150万円減るといった方法です。
この方法がナンセンスなのは子供でも分かるでしょう。たしかに税額は150万円減りますが、その前にキャッシュが500万円減っているので、差引350万円のキャッシュが減ったことになります。おカネを増やそうとして節税したものの、やり方を誤ったために、逆におカネを減らしてしまった訳です。これではおカネを捨てたのと同じです。
この例はあまりに単純ですが、世の中の「節税対策」なるものは(バリエーションはあるものの)ほとんどがこれの応用パターンです。

2 誤った銀行借入対策
「ウチは、利益は上がっているけど、おカネが増えなくてね。」
→「では、銀行借入のため銀行提出用の経営計画書と黒字の決算書を作りましょう。」というパターンです。
そもそも経営計画や決算書というものは、銀行のために作るものではなく、会社の経営のために作るものです。すなわち経営者が経営の指針として作る計画とその結果報告です。
にもかかわらず、会社経営目的と銀行借入目的を同じ計画書で済ませようとするところにムリがあります。何とか銀行借入を成功させようと背伸びして作るので、往々にして見せかけだけの達成不可能な計画になります。
これでは仮に借入に成功しても返済ができず、会社はますます窮乏することになります。
さらには、社員の士気が下がり、ともすると粉飾決算にもなりかねません。

3 起死回生の新規事業進出
「資金が苦しくなった、売上も伸びない、銀行融資も断られた。このままでは存続できない。」
「もうこうなったら新規事業に進出するしかない、それなら銀行も融資してくれる。」と安易に進出するものです。
これは危険です。その新事業が今後伸びる保証はなく、また自社がその事業に強みを持っている訳でもなく、さらには新規事業進出のための準備もロクにしていないのですから。これでは成功するはずがありません。

 頭が痛いのは、会計事務所がこれらのやってはいけない事を積極的に推進してしまっていることです。
彼らは、1を税務署の方を向いた決算、2を銀行の方を向いた決算などと呼んでいます。
響きがよく妙に説得力があるのが困りものです。

(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

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