令和5年 SAJ会長年頭挨拶

新たな中期活動目標の実現に向けて

一般社団法人ソフトウェア協会 会長
田中 邦裕

新年明けましておめでとうございます。

令和5年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。

まず、昨年6月の定時総会において、私、田中邦裕が荻原紀男前会長の後を引き継ぎ当協会の会長に就任いたしました。皆様、今後とも引き続き宜しくお願い申し上げます。

さて、皆様におかれましては、平素より当協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。

また、昨年11月には水谷学名誉顧問(元筆頭副会長)が、当協会の活動を通じたソフトウェア業界への貢献を高く評価され、天皇陛下より藍綬褒章を賜わる栄誉に浴しました。心よりお慶び申し上げます。

昨年は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発して、食料やエネルギー価格の高騰により、世界的なインフレの進行、金利上昇及び長短金利の逆転(逆イールド)など世界経済に景気後退の足音が忍び寄ることとなりました。

このような先行き不透明な中、昨年、政府においても物価対策等を中心に二度にわたる補正予算、経済対策が打ち出されました。その中でIT・デジタル政策に目を向けますと、政府は「デジタル田園都市国家構想」「デジタル推進人材育成」を引き続き推進するとともに、令和4年度第2次補正予算においてソフトウェア関係で、次世代計算基盤及びクラウド産業基盤の実現・確保に向けた技術開発支援と環境整備で6百億円を計上しました。また、デジタル臨時行政調査会では9000以上に及ぶアナログ的規制を今後2年間で99%以上見直すとの方針も示されました。DX投資促進税制も延長されました。当協会もこれらの政府施策を注視し、必要に応じて関係当局に提言を行ってまいります。

一方、当協会は会長交代の節目に「中期活動目標」として、

①会員交流の拡大を推し進め、会員企業の経営層から現場層に至るまで、全レイヤーにおける交流促進を行うとともに、各種課題を解決し、ビジネス拡大に寄与する

②デジタル人材の一層の採用・確保のため、教育機関との連携を深め、会員企業が各種のインターンシップなどを積極的に活用できるよう支援していく

③引き続き影響力を維持するために、質の良い提言の収集と取りまとめを行い、それを関係先に対して伝えていく

④東京だけでなく他地域における会員獲得や交流の促進を進め、地方創生に対して貢献を行う

⑤スタートアップをはじめとする新しい企業の創造を支援するとともに、新しく生まれる団体の事務局機能等を通じて、新しい力を取り込む

の5項目を掲げ、令和5年は、新たに設置された「広報委員会」及び「地域担当理事制」の導入を手始めとして、事務所の拡張を含めた事務局内DX化及び会員サービスの向上も推進しつつ、中期活動目標の実現に向けて邁進してまいります。

次に当協会のコロナ禍での委員会・研究会活動ですが、Withコロナが社会に浸透し大規模な懇親会も含め対面・リアルな活動を活発化させました。場所を問わず参加でき移動時間を必要としないことから講演会やセミナーのオンライン化が定着しましたが、以前よりも参加者数も増えて会員満足度の向上にも寄与しました。また、新たに設置された「地域デジタル推進委員会」の下、「顔認証ビジネス研究会」、「地域5G研究会」、「DX推進研究会」が各種アイデアソンやアワード、講演会の開催などを通じて協会活動の地域展開及び新たな会員の獲得をアクティブに推進しております。加えて、昨年1月には内閣官房まち・ひと・しごと創生本部と地方創生テレワーク推進に関する包括連携協定書を締結し、これを契機にして、その後武雄市、荒尾市、袋井市など地方自治体とも関係が深まり、当該地域への視察団派遣や理事会開催、若手エンジニアによるアイデアソンなどを実施しました。コロナ禍ですが、今年はアジアなどへの海外視察ツアー及び若手技術者に対しても人材育成のため海外の先端技術研修等を検討・実施してまいります。

会員からの期待が特に高い政策提言について、当協会は、毎年会員の皆様からの政策要望をとりまとめてきましたが、引き続き一般社団法人日本IT団体連盟等を通じて関係各方面への働きかけを通じてその実現に努めます。特に、今年10月にはインボイス制度の導入が控えており、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)と連携しつつ、会員企業のデジタル化やクラウド化などへの業態転換を後押しできるような政策課題に積極的に取り組みます。また、給与・労務管理システム会員が多く所属する社会保険システム連絡協議会では、マイナンバー利活用と適正な電子申請制度の確立を進めます。さらに、当協会のプレゼンスの向上とともに、経済産業省、総務省、厚生労働省、デジタル庁はもちろん、財務省、国税庁、公正取引委員会、消費者庁、個人情報保護委員会などとも関係がますます深まっており、政府から出される各種方針、報告書、法令改正などへのパブリックコメントの提出や当局との意見交換などにも積極的に対応してまいります。

デジタル社会の進展とともに、サイバー攻撃への備えがますます不可欠となっています。このため、当協会ではSoftware ISACを中心にそれらサイバー攻撃に対する注意喚起やレポートなどを公表するとともに、経営者等へのセキュリティ対応の重要性の普及啓発に努めてまいります。特に、昨年は半田病院(徳島)、急性期・総合医療センター(大阪)へのランサムウェアによるサイバー攻撃は地域の医療インフラに甚大な障害を与えましたが、当協会から両病院にサイバーセキュリティの専門家を派遣し、初動対応や復旧作業の支援を行い、政府からも高く評価されました。今年も、厚生労働省と連携しつつ、医療従事者向けのサイバーセキュリティ研修、事業継続計画(BCP)の提案、サイバー攻撃への初動対応支援などに積極的に協力してまいります。

DX及びWithコロナの時代を迎える中、当業界は恒常的な人財不足が悩みであり、厚生労働省からの支援を受け就職氷河期世代を対象とした資格取得のための訓練及び就職支援に積極的に取り組み、政府からも高く評価されております。ただ、これらの人財も社会人基礎力の不足など多様な課題を抱えており、IT業界へのさらなる参入促進のため、当協会としても会員企業と共同してメタバース技術を用いた就業・社会参加支援プラットフォームの開発戦略の策定に取り組んでまいります。

既存の事業についても、次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストについては、協賛企業と協力しつつ一層の充実に努めるとともに、IPA未踏IT人材発掘・育成事業と連携し、我が国におけるプログラミング人材の育成に貢献していきます。

起業家が起業家を育てるスタートアップ支援事業も昨年2社目のグロース市場への上場を果たしました。今後も既存出資先への支援を継続してまいります。

また、個人情報の意図しない漏洩を防ぐことも重要です。当協会は、プライバシーマーク指定審査機関として指定を受けて以来、昨年末までに更新及び新規を合わせた会員企業の審査実績は約250社(延べ約1500件)となりますが、今後とも引き続き審査を実施してまいります。

さらに、当協会では、PCやスマホ、サーバー機器などの廃棄から生じる個人情報の漏洩を防ぐため、データ消去証明書の発行事業を引き続き推進するとともに、消去ソフトの技術認証及び消去事業者の消去プロセスの認証を行うデータ適正消去実行証明協議会(ADEC)の活動を同協議会事務局として支援してまいります。

次に、ソフトウェア品質の確保のためのPSQ認証制度ですが、クラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の第三者適合性評価であるPSQ-Standard認証及び自社で評価を行うPSQ-Lite認証を今後とも推進するとともに、昨年実績が出たソフトウェアのJIS化についても関係機関と協力してまいります。

最後になりましたが、当協会は、関係各府省及び他のIT・デジタル関係団体とも連携して、日本のソフトウェア及びデジタル産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援及びご協力をよろしくお願い申し上げて新年のご挨拶とさせて頂きます。

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