令和4年 SAJ会長年頭挨拶

DX及びwithコロナの時代を迎えて

一般社団法人ソフトウェア協会 会長
荻原 紀男

新年明けましておめでとうございます。

令和4年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。

まず、皆様におかれましては、平素より協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、昨年度は、当協会より推薦させて頂いたさくらインターネット㈱様がプログラミング教育の普及啓発の功績で科学技術分野において文部科学大臣賞を受賞し、また、情報化促進貢献個人等表彰において、同じくゲヒルン㈱様及び㈱シーピーユー様が経済産業大臣賞を受賞されました。心よりお慶び申し上げます。

政治面では、菅政権に代わり誕生した岸田政権が総選挙により安定過半数を確保するとともに、「新しい資本主義実現会議」を立ち上げ、分配政策の重視を掲げております。

また、政府のIT・デジタル政策に目を向けますと、昨年9月にデジタル庁が設立されるとともに、同11月に閣議決定された補正予算において、「デジタル田園都市国家構想」及び「経済安全保障」のための先端半導体の国内生産拠点整備やポスト5Gの基盤強化のための研究開発事業などが盛り込まれました。また、それには、会計ソフト、受発注システム、決済ソフト等を対象とするIT導入補助金、データセンターの地方拠点整備、地域デジタル人材育成確保推進事業なども含まれており、今後とも当協会としても注視してまいりたいと思っております。

このように、政府は、今後ともデジタル庁を旗頭に官民挙げてのIT・デジタル政策を強力に推進しているところです。一方、当協会としても、昨年7月に協会名称を「一般社団法人ソフトウェア協会」に変更するとともに、デジタル社会を推進するために、「ソフトウェア(国)の未来を創る」をビジョンに見据え、協会活動を通じてソフトウェアに関わるすべての組織(チーム)・人をサポートすることをミッションとして活動してまいります。これを受け、定款に正会員としてソフトウェア利用企業(ユーザー企業)を明示するとともに、個人会員も新設しました。

次に当協会のコロナ禍での取り組みですが、昨年も総会懇親会は中止としましたが、9月末に東京の緊急事態宣言が解除されたことを受けて、原則、お互いにワクチンの2回接種済の場合に限って対面での活動を認める独自のガイドラインを策定し、一部コロナ対策を緩和いたしました。これを受けて、東京のコロナ対応レベルが1まで下がったこともあり、「ワクチン・検査パッケージ」を活用し、昨年11月には350名規模の「協会名称変更記念パーティー」を無事に開催できました。そして各団体が次々と新年のイベントの中止又は縮小を発表する中で、唯一リアルで開催されたためか、会員企業の皆様だけでなく関係各方面からも久しぶりの交流であったと大変好評でした。今後ともコロナ禍においても、会員の皆様に喜ばれる協会活動を念頭におきつつ、IT・デジタル業界を盛り上げていければ幸いであります。

会員からの期待の高い政策提言ですが、当協会においては、毎年8月末を目途に会員の皆様からの政策要望をとりまとめることとし、一般社団法人日本IT団体連盟を通じて関係各方面への働きかけを通じてその実現に努めます。その際、ソフトウェア業界に直接的に関係する項目だけでなく、こども庁の設置やGIGAスクールのための基盤整備(電力や通信など)など次世代の人材育成にも留意してまいります。さらに、当協会のプレゼンスの向上とともに、公正取引委員会、消費者庁、個人情報保護委員会を始めとする規制当局や経済産業省、総務省、厚生労働省、デジタル庁などとの関係もますます深まっており、関係府省等から出される各種方針、報告書、法令改正などへのパブリックコメントの提出や当局からのヒアリングなどにも積極的に対応してまいります。

デジタル社会の進展とともに、どうしても個人情報の意図しない漏洩への不安がついてまわります。そのため、当協会では、PCやスマホ、さらにはサーバー機器などの廃棄から生じる可能性のある個人情報の漏洩を防ぐため、データ消去証明書の発行事業を引き続き推進するとともに、消去ソフトの技術認証及び消去事業者の消去プロセスの認証を行うデータ適正消去実行証明協議会(ADEC)の活動を事務局として支援してまいります。

就職氷河期世代(35~55歳未満)の安定雇用の確保は労働分配率を向上させることから岸田政権の掲げる分配政策に沿ったものです。また、DX及びwithコロナの時代を迎え、ソフトウェアおよびネットワークの品質を確保するための人財の確保はIT・デジタル業界の喫緊の課題です。その意味で、当協会が、ソフトウェアの品質を確保するIT検証技術者及びネットワークエンジニアであるシステム運用技術者を育成する「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」を厚生労働省から受託し実施していることは、社会貢献的な意味合いからもその重要性が一層高まっております。当業界は恒常的に人財不足が悩みであり、同事業が会員皆様の重要な課題の解決の一助になれば幸いです。

また、近年、企業等を標的にしたランサムウェアなどによるサイバー攻撃が深刻化しており、特に中小企業への脅威が高まっています。このため、当協会ではSoftware ISACを中心にそれらサイバー攻撃に対する注意喚起やレポートなどを公表するとともに、経営者等へのセキュリティ対応の重要性の普及啓発に努めてまいります。

この他、新たに「DX推進研究会」、「スマートシティ研究会」、「スマート水産業研究会」、「健康経営推進研究会」を立ち上げ、当協会として会員企業に共通する課題の解決に向けて積極的に活動するとともに、次世代の若手経営者を育成するため「プロジェクトみらい(仮)」の活動を引き続き推進してまいります。

既存の事業についても、次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストについては、協賛企業と協力しつつ一層の充実に努めるとともに、IPA未踏IT人材発掘・育成事業と連携し、我が国におけるプログラミング人材の育成に貢献していきます。また、iCD(iコンピテンシデクショナリ)の普及・啓発及びそれを使った人材育成も推進します。

起業家が起業家を育てるスタートアップ支援事業も昨年1社上場を果たすことができ、今後とも既存出資先への支援を強化・継続してまいります。

ソフトウェア品質の確保のためのPSQ認証制度ですが、クラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の第三者適合性評価であるPSQ-Standard認証及び自社で評価を行うPSQ-Lite認証を今後とも推進してまいります。

会員企業のビジネスチャンス拡大については、アライアンスビジネス交流会を核とし、オンラインツールを活用しつつ、優れた技術や製品・サービスをもつ有望な会員企業の育成・支援を目的にビジネスマッチングの推進に努めます。

また、当協会は、プライバシーマーク指定審査機関として指定を受けて以来、昨年末までに更新及び新規を合わせた会員企業の審査実績は約250社(延べ約1,370件)となりますが、今後とも引き続き実施してまいります。

さらに、コロナ禍の状況を見極めながら会員企業の関心が高い地域への海外視察ツアー及び若手技術者に対しても人材育成のため海外又は国内の先端技術研修等を検討・実施してまいります。

今後、社会のデジタル化及びwithコロナ対応は不可避であり、政府とIT・デジタル業界一丸となった取組みが必要と考えます。そのため一般社団法人日本IT団体連盟やデジタル社会推進政治連盟を始めとする他のIT・デジタル関係団体と連携し、今後とも当協会の各種事業・活動を着実に推進していきたいと考えています。

最後になりましたが、当協会は、関連各府省とも連携して、日本のソフトウェア産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援及びご協力をよろしくお願い申し上げて新年のご挨拶とさせて頂きます。

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