一般社団法人ソフトウェア協会

令和3年 CSAJ会長年頭挨拶

デジタル化withコロナの一層の推進に向けて

一般社団法人コンピュータソフトウェア協会 会長
荻原 紀男

 新年あけましておめでとうございます。

 令和3年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。

 まず、皆様におかれましては、平素より協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。また、令和2年度情報化促進貢献個人等表彰において、当協会より推薦させて頂いたサイボウズ株式会社様が経済産業大臣賞を受賞されました。心よりお慶び申し上げます。

 さて、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活様式がすっかり一変する年でした。特に緊急事態宣言を境に在宅勤務のためテレワークが一気に進みました。これにより我が国経済は移動と対面接触が極端に制限されたことから、旅行、運輸、飲食、対面中心の小売業界などを中心に消費が蒸発してしまい、それを反映して株価も一時暴落しました。ただ、その後の日銀をはじめ各国当局による金融緩和、休業を補償する各種給付金による空前の財政出動、ワクチン開発の進展等により、年末には日経平均株価もバブル以来29年ぶりに最高値を更新するまでに持ち直しました。政治面では日米ともに政権交代が行われ、菅政権に代わってから矢継ぎ早に縦割り行政の是正、デジタル化の推進などを打ち出しております。

 政府のIT政策に目を向けますと、デジタルトランスフォーメーション(DX)、5G(大容量、低遅延、同時多接続)を推進してきましたが、コロナ禍でさらに加速されている感があります。経済産業省はDXを進めるための経営と市場、IT部門と事業部門などとの対話のツール(デジタルガバナンス・コード、DX推進指標、大臣認定制度)を順次整備しました。また、デジタル人材の教育・育成の観点からGIGAスクール構想なども推進しています。

 以上、政府は、今後ともwithコロナの継続及びデジタル庁の設置などを念頭に官民挙げてのデジタル政策を強力に推進しているところですが、当協会としても、ソフトウェア業界を取り巻くこのような環境の激変に対応し、CSAJ将来ビジョン検討会において今後の協会活動の方向性を示す将来ビジョンを次期総会までに公表する予定です。

 次に当協会のコロナ禍での取り組みですが、従前から2017年2月に公表した「働き方改革宣言」において、テレワーク推進の観点から2020年までにテレワーカー率30%以上との目標を掲げておりますが、もはやその達成を疑っておりません。各委員会や研究会等の協会活動も対面・集合方式から原則オンライン方式にシフトしましたが、むしろ場所や移動時間の制約がなくなったことから、参加者数は以前より格段に増えました。一方、総会懇親会は中止になりましたが、代わりにコロナ対策に万全を期して昨年9月には300名規模の「会員感謝の集い」を無事成功させました。各方面での自粛で気分が落ち込む中、当時IT業界で唯一開催されたためか、会員企業の皆様からも久しぶりの交流であったと大変好評でした。今後とも当協会としては、むやみに自粛ムードに流されることなく、むしろwithコロナをチャンスと捉えて、今後とも協会活動を盛り上げていきます。

 また、会員から最も期待の高い政策提言ですが、政策委員会及びその傘下のワーキンググループ(WG)において政策要望をとりまとめ、一般社団法人日本IT団体連盟を通じて関係各方面への働きかけを通じてその実現に努め、ソフトウェア業界の発展に貢献してまいります。昨年は電子インボイスWGを設立しましたが、2023年10月の適格請求書等保存方式の導入に向けて、電子インボイスの標準仕様を策定・実証し普及促進させることを目的とした「電子インボイス推進協議会」の設立を支援し、同協議会の事務局業務も当協会が引き受けました。

 どんな時でも個人情報の漏洩を防ぐデータ消去証明書の重要性は変わりません。一昨年の神奈川県庁の事件を受け、総務省は自治体向けの情報セキュリティガイドラインを改定し、同ガイドライン中でデータ適正消去実行証明協議会(ADEC)も紹介されました。それを受けて自治体からの問合せも増えるとともに、ADECの会員数や認証件数も確実に増加しており、今後ともデータ消去証明書の発行業務を着実に推進してまいります。

 昨年はいわゆる就職氷河期世代の安定雇用の確保に注目が集まりました。当協会では昨年11月に無料職業紹介業の許可を取得して、厚生労働省から令和2年度から集中実施期間(3か年)の事業として「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」を受託しました。同事業では、ソフトウェアの品質を担当するIT検証技術者及びネットワークエンジニアであるシステム運用技術者を総計1180名育成します。IT業界は恒常的な人材不足が悩みであり、会員皆様の課題解決の一助になれば幸いです。

 また、コロナ禍でテレワークの急進展に伴い、ネットワークセキュリティへの関心が高まりました。特に中小企業ではなおさらです。このため、セキュリティ委員会及びSoftware ISACでは、昨年4月にNTT東日本とIPAが構築した「シン・テレワークシステム」導入に向けたセキュリティポリシーを策定・公開しました。

 この他、有力キャリアと連携した「地域5G研究会」を立ち上げるなど活発に活動している「地域IoT推進委員会」を中心に当協会の活動地域の拡大を図るとともに、次世代の若手経営者を育成するため「プロジェクトみらい(仮)」の活動を引き続き推進してまいります。

 既存の事業についても、次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストについては、プログラミング教育委員会や協賛企業と協力しつつ一層の充実に努めるとともに、IPA未踏IT人材発掘・育成事業と連携し、我が国におけるプログラミング人材の育成に貢献していきます。また、iCD(iコンピテンシデクショナリ)の普及・啓発及びそれを使った人材育成も推進します。起業家が起業家を育てるスタートアップ支援事業も本年で7期目を迎え、今後とも出口を見据えた既存出資先への支援を強化・継続してまいります。

 ソフトウェア品質の確保のためのPSQ認証制度ですが、ソフトウェア品質向上宣言制度で普及のすそ野を拡大しつつ、クラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の第三者適合性評価であるPSQ-Standard認証及び自社で評価を行うPSQ-Lite認証を今後とも推進してまいります。

 会員企業のビジネスチャンス拡大については、アライアンスビジネス交流会を核とし、オンラインツールを活用しつつ、優れた技術や製品・サービスをもつ有望な会員企業の育成・支援を目的にビジネスマッチングの推進に努めます。

 また、当協会は、平成19年度に一般財団法人日本情報経済社会推進協会からプライバシーマーク指定審査機関として指定を受けて以来、昨年末までに更新及び新規を合わせた会員企業の審査実績は約240社(延べ約1,200件)となります。今後とも、コロナ禍に対応してオンライン審査を導入しつつ、本審査事業の一層の拡大を目指して個人情報保護の推進に寄与して参りたいと考えております。

 国際関係では、コロナ禍の状況を見極めながら会員企業の関心が高い地域への視察ツアーや若手技術者のグローバルな視点からの人材育成のため米国の先端技術研修の実施の可能性を引き続き検討してまいります。

 今後、withコロナ対応の鍵はデジタル化の推進であり、これは政府とIT業界一丸となった取組みと考えます。そのため一般社団法人日本IT団体連盟やデジタル社会推進政治連盟を始めとする他のIT関係団体と連携し、今後とも当協会の各種事業・活動を着実に推進していきたいと考えています。

 最後になりましたが、当協会は、関連各府省とも連携して、日本のソフトウェア産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援及びご協力をよろしくお願い申し上げて新年のご挨拶とさせて頂きます。

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