一般社団法人ソフトウェア協会

平成31年 CSAJ会長年頭挨拶

デジタルトランスフォーメーション(DX)の一層の推進に向けて

一般社団法人コンピュータソフトウェア協会 会長
荻原 紀男

 新年あけましておめでとうございます。皆様には、平素より協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。平成最後の年頭にあたりご挨拶申し上げます。

 昨年、まず本庶 佑(ほんじょ たすく)特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞は明るいニュースでした。ただ、西日本を襲った集中豪雨や北海道胆振東部地震など多くの災害に見舞われました。被災地の方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一刻も早い復旧・復興を祈念しております。

 政治・経済面では、米国トランプ政権のアメリカ第一主義により我が国も通商問題や中国経済減速の余波などの懸念はあるものの、我が国周辺では米朝首脳会談の実現により緊張緩和が進むとともに、北方領土問題にも日ロ首脳会談で明るい兆しが出てきました。

 政府のIT政策に目を向けますと、経済産業省において昨年5月に「デジタルトランスフォーメーション(DX)研究会」(『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を9月公表)が設置されましたが、これに呼応するかのように6月に「世界最先端デジタル国家創造宣言」が閣議決定されました。また、7月に「中小企業等経営強化法」の一部改正により中小企業のIT活用を支援するITベンダー等を「情報処理支援機関」として認定する制度が創設され、CSAJ会員企業も多数認定を受けました。

 このように政府は「デジタルファースト」、「中小企業のIT活用」を推進しておりますが、当協会としても以下の通り各種の取り組みを行ってまいります。

 まず、本年5月には新天皇即位に伴う改元、10月には消費税増税・軽減税率の導入が予定されており、IT業界はかなり慌しくその対応に追われそうですが、当協会としても、会員各社とともに遺漏なきよう万全な対策を講じてまいります。

 次に、政策提言ですが、昨年8月に日本IT団体連盟を通じて、年払い利用料における消費税の取り扱いを始め、Fintechを一層促進する銀行法の改正、キャッシュレス化の推進、IT導入補助金の運用改善、脆弱性検証センターの設立、北海道胆振東部地震を受けたデータセンタの非常用電源設備強化に対する支援などを提出しましたので、その実現に向けて関係各方面への働きかけを着実に進めてまいる所存です。

 また、当協会は昨年2月にデータ適正消去実行証明協議会(ADEC:Association of Data Erase Certification)を設立し、廃棄、リユースのPCなどに残ったデータの適正消去について第三者が証明し、電子証明書を発行する事業を開始しました。昨年OEM製品を含め6件の消去ソフトウェアと消去サービス事業者2社がADECから認証を取得しており、本年より本格的に電子証明書が発行される予定であり、今後一層の普及拡大を期待しています。

 これからはデータを制する者がビジネスを制するデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代となります。そのためにはIoT(Internet of Things)、ビッグデータ及び人工知能(AI)の中核技術を学びつつ新たなビジネスの創造を行えるDX人材の育成がますます重要になります。当協会では厚生労働省の支援を得て、まさにDX人材を育成するための「高度IT技術を活用したビジネス創造プログラム」を開発し、ITベンダーのみならずユーザー企業の人材も対象に同プログラムを実施(総受講時間120時間、受講者40人程度/年)する予定です。また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の支援を受けて、同様にDX人材の育成講座を継続していく予定です。

 来年2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが、それに向けてサイバーセキュリティ対策の強化は当協会としても看過できない問題です。そのため、昨年7月にSoftware ISAC (Information sharing and Analysis Center)の設立を理事会で決定したところですが、今後とも当協会会員と脆弱性情報を適切に共有し、セキュアなソフトウェアを開発できるよう会員各社を支援してまいります。

 この他、関西圏でのセミナーや交流会の開催を皮切りに、地域の活性化に向けた活動を行う「地域IoT推進委員会」や、次世代を担う若手が集まり、お互いに会社の枠を超えて、さまざまな価値観を交流するためのワークショップ等を行う「プロジェクトみらい(仮)」、そして、「農業ICT研究会」、「インターンシップ採用研究会」を新たに立ち上げるなど様々な課題に取り組んでおります。

 既存の事業についても、CEATEC JAPAN 2018 では、メインテーマのIoTへのシフトが定着し、出展企業数及び来場者数ともに前年比で着実に伸ばすことが出来ました。次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストの一層拡大に努めつつ実施するとともに、IPA未踏IT人材発掘・育成事業や全国小中学校プログラミング大会と連携し、我が国におけるプログラミング人材の育成に貢献していきます。また、iCD(iコンピテンシデクショナリ)を使った人材育成も推進します。

 起業家が起業家を育てるスタートアップ支援事業も本年で5期目を迎え、EXITが視野に入ってきた企業も出てきました。今後とも、関係支援機関と連携して優良案件の発掘に努めるとともに、ファンドの存続期間を最大3年間延長して引き続き既存出資企業への支援を強化・継続してまいります。

 さらに、PSQ認証制度については、クラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の品質について第三者が適合性評価を行うものであり、これまで41製品が認証を受けております。今年は、新たに導入した自己チェックリストによる簡易認証制度(PSQ-Lite)及びソフトウェア品質向上宣言制度により本制度の裾野を広げ、今後とも一層の普及拡大に努めます。

 会員企業のビジネスチャンス拡大については、引き続きアライアンスビジネス交流会を核として、優れた技術や製品・サービスをもつ有望なベンチャー企業の育成・支援を目的にビジネスマッチングの推進に努めるとともに、会員の助成金の活用及びマーケティング活動の啓発に一層努めます。

 また、当協会は、平成19年度に一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマーク指定審査機関として指定を受けて以来、昨年末までに更新及び新規を合わせた会員企業の審査実績は240社(延べ923件)となりますが、今後とも本審査事業の一層の拡大を目指して個人情報保護の推進に寄与して参りたいと考えております。

 国際関係では、昨年7月に深センと杭州に中国視察ツアーを実施するとともに、済南市で開催された「第17回日中情報サービス産業懇談会」にも参加し、中国情報サービス産業協会(CSIA)と以前のような交流の再開を誓いました。今後とも中国をはじめ、アジア圏への国際展開をにらんだ活動を継続してまいります。

 DX及びConnected Industriesを実現する鍵は、それを牽引する人材の育成及びデータ連携・利活用の推進に対して政府及びIT業界一丸となって取り組むことと考えます。そのため一般社団法人日本IT団体連盟やIT社会推進政治連盟を始めとする他のIT関係団体と連携し、今後とも当協会の各種事業・活動を着実に推進していきたいと考えています。

 最後になりましたが、当協会は、経済産業省、総務省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省等の政府機関と共に、日本のソフトウェア産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援及びご協力をよろしくお願い申し上げて新年のごあいさつとさせて頂きます。

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